地域においては、子育て家庭の孤立や児童虐待の増加など、親子を取り巻く課題が深刻化している。親の家族エンパワメントとは、親が育児上の問題に気づき,家族内で問題を共有し、育児情報の獲得や地域資源の活用を通して、育児の効力感や親役割達成感が高められ、家族で力を合わせて問題解決ができている状態であると考え、幼児を持つ親の家族エンパワメント尺度を開発した。構成概念として、「家族との関係性」、「育児の効力感」、「地域とのつながり」、「親役割達成感」、「サービスの認知と活用」の家族エンパワメントの5つの側面が明らかにされた。 2021年度は、幼児を持つ親の家族エンパワメント尺度の5つ側面の関連について、共分散構造分析を用いて、親の性別の等質性を明らかにすることを目的とし、さらなる分析を進めた。5つの側面は、「家族との関係性」から「育児の効力感」「サービスの認知と活用」「地域とのつながり」を経由し、「親役割達成感」に間接的に関連する構造モデルによって説明できることが示された。また、多母集団同時分析を行い、モデルの修正を繰り返し、最適モデルを探った。親の性別の等値制約を置いたモデルの適合度指標を比較し、制約ありのモデルで適合度の向上がみられたため、母集団間で各因子を測定する観測変数が等しいモデルを採択した。これらの結果より、幼児を持つ親の家族エンパワメント尺度は、男性と女性において同じ質問項目で評価できることが示された。 今年度の成果の意義は、子育て期の家族への家族エンパワメントを高める支援が効果的である可能性が示唆されたことである。今後の課題は、幼児を持つ親の家族エンパワメント尺度を活用しながら、家族支援に向けた家族の現況を同時に記録できる家族エンパワメントのアセスメントシートを開発し、その活用方法と効果的な支援方法を明らかにすることである。
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