研究課題/領域番号 |
17K12597
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
清水 洋子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (90288069)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子ども虐待予防 / 個別支援 / グループ支援 / 効果 / 包括的支援プログラム / 保健師 |
研究実績の概要 |
1.子ども虐待予防のための個別支援とグループ支援(MCG:Mother and Child Group)の併用による包括的な支援プログラムとその効果を検討するため、支援経験のある保健師を対象に質的調査を実施し、今回は保健師が捉えたグループ参加の効果について検討した。 2.対象:保健センター等計7か所の虐待予防のグループ支援に関わった経験がある保健師17名を対象に1時間程度の半構成的インタビュー調査を実施した。 3.内容:背景、母親の特徴とグループ参加状況、支援と課題、参加継続に必要な支援と体制、グループ支援と個別支援の関係、参加により期待される効果(母親側・保健師側)、等とした。調査は本人の同意を得て、録音し、匿名化し逐語録を作成。分析は情報をコード化、カテゴリー化し、内容分析を実施した。 4.結果:保健師の経験年数は1~23年、グループ支援経験年数は1年~7年(平均3.1年)であった。参加の効果について、母親側:(1)同じ体験をした他の母親の話を聞くことで、「共感」「安心」が得られる、(2)自身が語ることで、「自分と向き合う」「自分の感情に意識を向ける」、(3)グループの中で他者がともに共感してくれることで「認められる感覚(の体験)」「これで大丈夫(と実感)」、(4)継続的に体験することで少しずつ「自分自身を肯定」、(5)共感し信頼し合える他の母親や保健師からの情報提供により「資源活用への意識」につながる、保健師側:(1)他の母親の語りを聞き、自身も語る中で「自分と向き合い」ながら、互いに「深い共感」を体験、(2)個人支援とは異なる母親の情報を得られる、(3)母親の変化(回復過程)をグループの中で捉えることで、「対象(母親)への理解がより深まる」「(回復する姿をみることで)支援への意欲向上」につながることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビュー調査の情報をもとに、保健師が捉えたグループ参加の効果について保健師側、母親側の視点から分析を進めた。結果、グループ参加により、母親と支援者(保健師)は相互作用の中で影響を受けながら、母親は「自分と向き合う」「自分の感情に意識を向ける」「認められる感覚(の体験)」「これで大丈夫(と実感)」「自分自身を肯定」「資源活用への意識」等の効果が期待されること、保健師はグループの中で母親の変化(回復過程)をみることで、「対象(母親)への理解がより深まる」「支援への意欲向上」「自身と向き合う機会」につながるなどの効果があると示唆された。研究成果は2021年第80回日本公衆衛生学会で発表をした。 新型コロナ感染症拡大の影響により、研究協力機関の保健師等との結果の共有および個別支援およびグループ支援による包括的支援プログラムの検討会議は延期している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでデータ解析により得られた知見をまとめ研究協力機関保健師と共有し、調査結果を踏まえ子ども虐待予防のための個別支援とグループ支援の併用による包括的な支援プログラムについて検討する。 研究成果をまとめ、国内外の学会等で報告し、最終報告書を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に予算の使用額が生じた理由として、前年度と同様に新型コロナ感染症拡大の影響により解析に関わる人件費の使用ができなかったこと、研究協力機関の保健師等との結果の信頼性、妥当性に関する検討会議および個別支援およびグループ支援による包括的支援プログラムについて討議する会議も延期したため、計画していた旅費や会議費の使用がなく、国外の学会に直接参加できなかったこと等があげられる。 今年度は延期していた研究協力機関とオンラインと対面による会議を開催し、調査分析結果の共有を行うとともに、子ども虐待予防の包括的支援プログラムに関する検討会を実施するための会議費や旅費、研究成果を学会等で公表するための学会参加費や旅費、報告書を作成するための経費や人件費等を使用する予定である。
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