研究課題/領域番号 |
17K12601
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
森 礼子 岐阜聖徳学園大学, 看護学部, 助教 (70733038)
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研究分担者 |
古澤 洋子 岐阜聖徳学園大学, 看護学部, 講師 (00342064)
尾関 唯未 岐阜聖徳学園大学, 看護学部, 助手 (10781297)
柳澤 理子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (30310618)
鷲野 嘉映 岐阜聖徳学園大学, 看護学部, 教授 (90220855)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 結核 / 地域DOTS / リスクアセスメント票 / フィリピン人結核患者 / 結核患者支援 |
研究実績の概要 |
結核中蔓延国である日本は、WHOが進めるDOTS(Directry Observed Treatment,Short-course)を受け、日本版DOTSを展開している。在宅結核患者を対象とする地域DOTSでは、全国的に服薬中断・脱落しないためのツールとしてリスクアセスメント票を使用しているが、各保健所が独自に作成したものであり、その妥当性を検証したものは見当たらない。本研究では、妥当性のある結核患者リスクアセスメント票を開発することを目的とし、結核患者全体版と日本に在留する外国人結核患者で最も多いフィリピン人患者版の2版の開発を行うこととした。この2版を開発することにより、DOTS支援を行う保健師がより効率的で質の高い服薬支援を提供することが可能となり、DOTS成功率の向上につながる。その結果、結核再発や多剤耐性結核の発生予防となり、国内の結核罹患率の低下に寄与できる。 当該年度は、かねてから研究者が東海4県(愛知、岐阜、三重、静岡県)の保健所で使用されているリスクアセスメント票の調査に着手してきており、今回その分析結果の妥当性を検討するために専門家パネルを開催し、結核患者全体版リスクアセスメント票を開発するに至った(A)。 フィリピン人結核患者版については、過去に服薬中断・脱落したフィリピン人結核患者の担当経験があった保健師にインタビュー調査を行い、フィリピン人患者の特徴的なリスクを抽出した(B)。 今後、(A)と(B)とを組み合わせ、フィリピン人結核患者版リスクアセスメント票(案)を作成する。作成した(案)は、東海4県の保健所で試行し、不具合等を修正する。更に、その修正(案)を全国の保健所を対象に試行し再修正を行う。最終修正(案)を専門家パネルで検討し、妥当性のあるフィリピン人結核患者用リスクアセスメント票を開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である結核患者全体版のリスクアセスメント票とフィリピン人結核患者に特化したリスクアセスメント票との2版のリスクアセスメント票の開発のうち、結核患者全体版の開発が終了した。研究課題は順調に進んでおり、現在、フィリピン人結核患者版のものの開発に着手している。 研究者は、これまでに結核患者全体版の調査研究を進めてきていた。今年度はこれまで蓄積してきた調査結果を分析し、妥当性のある結核患者全体版のリスクアセスメント票の開発をすることであった。妥当性確保として行ったのは、専門家らによる結果の検討である。まずは、専門家パネルの構成員について検討し、結核専門機関のDOTS研究者に加え、全国を視野に保健衛生活動における結核研究者、地域DOTS実践専門家を選出し依頼した。専門家パネルでは、今回の調査分析結果およびそこから導いたリスクアセスメント票(案)についての検討を行った。各専門家らによって、多角的に評価が行われ、最終的に本研究結果とリスクアセスメント票(案)が妥当であることが示され、結核患者全体版の完成に至った。 次にフィリピン人版の開発に着手し、服薬中断・脱落したフィリピン人結核患者の担当経験がある保健師インタビューを行った。東海圏の県・市の結核統括部署に相談し、稀少な対象者を確保することに努め、東海圏域全ての部署に打診した結果、7名の対象者を確保した。7名全てのインタビュー調査実施後、データを質的記述的に分析し検討を重ね、フィリピン人患者特有の服薬中断・脱落要因を抽出したところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フィリピン人結核患者版リスクアセスメント票(案)を作成し、東海圏においてその試行調査を行う予定である。そして、試行調査した結果を修正し、更に全国を対象に修正案を試行し、フィリピン人結核患者版の開発を完成させる予定である。 次年度は、今年度に開発した結核患者全体版のリスクアセスメント票とフィリピン人結核患者特有の中断・脱落要因とを組み合わせ、フィリピン人結核患者版リスクアセスメント票(案)を作成する。それを実際に東海圏の保健所で試行してもらい、試行結果についてインタビューを行う。この試行では、併せてフィリピン人結核患者が保健師によって保健指導された内容をどの程度理解したのかを質問紙を用いて把握し、各リスク項目について試行結果と照合し、その適正を検討し修正を行う。 再来年度は、東海圏において試行し修正したフィリピン人版(案)を全国で試行する。当初の研究計画どおり、フィリピン人結核患者の発生が多い上位10都府県で試行調査を実施する。東海圏での試行調査同様、試行後インタビューを行い、各リスク項目について検討し修正を重ねる。修正した各項目を分類し、全体構成を整え最終(案)を作成する。最終(案)は、専門家パネルを開催し、その妥当性を確保する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、服薬中断したフィリピン人結核患者の対応経験がある保健師へのインタビュー調査において、対象保健師を確保することが困難であると予測していたため、研究協力者らとの打ち合わせを数回分計上していた。しかし、事前に対象者の確保が困難であった場合の対応策を練った結果、7名の対象者を確保することができ、その旅費が余剰金となった。また、調査研究協力者に謝金を計上していたが、受け取りを辞退された方があった。これらのことから生じた余剰金は次年度に繰り越すこととした。 次年度は、試行調査において各保健所に赴いて依頼するため、旅費が必要である。また、今後の研究では、フィリピン人結核患者の現状を把握した上でリスク項目の検討を進める予定であり、現在保健所に所属する研究協力者や結核の専門家らに情報を得るとともに、円滑に本研究を終えるよう打ち合わせのための旅費が必要となる。研究成果報告については、次年度内にこれまでの研究結果を国際学会で発表する予定にしており、発表準備・旅費等が必要となる。次年度にはこれらのことを中心に予算を使用する予定である。
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