本研究の目的は、地震の復旧・復興期における乳幼児のいる被災家族への市町村保健師の育児支援モデルの開発である。本研究は、被災が乳幼児のいる家族の育児に与えている影響と家族のニーズ、被災地における被災内外の支援グループ及び市町村保健師の育児支援の実態と課題を明らかにする。そして、被災地で直接支援を行うとともに健康課題に関する被災地内外の支援グループのコーディネーターの役割を担う、市町村保健師が行う育児支援モデルを構築するものである。本研究において、被災した乳幼児の健康を維持し、被災で生じる育児に関する課題を家族が解決していくための、市町村保健師の育児支援のあり方を提言することであった。 被災地の子育て支援施設職員へのインタビューと、被災時にコーディネート機能を担う保健師にグループインタビューを行い、乳幼児のいる被災家族への支援の課題を抽出した。その後、コーディネート機能の実装研究を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大により都道府県をまたぐ移動、積極的疫学調査協力や学内業務の多忙により調査を行うことができなかった。そこで、見出した課題に対する取り組みについて、先行研究や実践報告を分析し、市町村保健師が行う災害時育児支援モデルを提案した。本モデルは、発災前の高リスクの乳幼児への特定・家族の災害計画の作成支援・地域ベースの準備プログラム、復旧・復興期のリスクコミュニケーション・地域のレジリエンス構築活動、ピアサポート・親支援・情報管理・災害後の育児支援システムの構築等が含まれた。このモデルは、乳幼児のいる被災家族への災害時支援につながる仮説的な提案モデルと考える。
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