研究課題/領域番号 |
17K12613
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 教授 (30271084)
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研究分担者 |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外国人住民 / 防災 / やさしい日本語 / 地域 |
研究実績の概要 |
本年度は,前年度におこなった地震および防災に関するアンケートの結果の分析をもとに、(1)外国人住民にあまり知られていない防災対策について考えるとともに、(2)「やさしい日本語」の知識のない日本語母語話者が「やさしい日本語」を使って文章を書く場合の注意点についての調査分析、および(3)地域の防災において外国人住民を視野に入れることについての重要性を知ってもらう取り組みについての提案をおこなった。 (1)のアンケートでは、地震に関する用語の理解について(地震、津波、避難、危険)、自宅近くの避難所について、普段からの備えについて等の質問の回答を留学生と日本人大学生で比較したところ、「普段からの備え」について大きく差が見られ、そもそも「普段からしておくこと」自体の理解が難しいことがわかった。(2)では漢字のルビや分かち書き等、ある程度テクニカルな面で対応できる部分はあっても、「重要な部分」を見極める力によって回答者間で差が見られることが伺えた(日本語日本文化教育研究会にて発表)。(3)では、小学校の総合的な学習の時間で地域の防災をテーマに学習活動をおこなう場合を想定し、自力で避難が困難な人・避難に補助が必要な人(お年寄り、子ども、傷病者、障がいのある人等)に日本語が十分に理解できない外国人住民を含めて考えることを盛り込んで防災対策について考える活動をおこなう提案をおこなった(比較文化学会にて発表)。以上については研究成果中間報告書に記載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、前年度におこなった地震および防災に関するアンケートの結果の分析をおこなった。 地震に関する用語については、「地震」「津波」の語彙はしっていても、日本に来るまで地震の経験がない外国人には被害のイメージがわきにくい等、自由記述をより深く分析することもできた。学校関係者や地域住民へのワークショップのような勉強会を開くことはできなかったものの、日本語教育について学んだことのない日本語母語話者にとって「やさしい日本語」のどんなところが困難であるかについての調査分析をおこない、また学校で学ぶ児童生徒の取り組みに地域の防災を取り入れる際に外国人住民について知ってもらう工夫を提案することができた。以上については日本語日本文化教育研究会および日本比較文化学会で発表し、会場の参加者との意見交換等をおこなうことができた。学会の発表の場には学校関係者の参加者もあり、今後色々な方面から外国人住民の防災対策について考える取り組みを進める方向について意見が一致した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度おこなった「やさしい日本語」による作文の調査分析の結果をもとに、一般日本人に向けた「やさしい日本語」の教材の開発をおこなう。試作版が完成したら、関係者にも使用してもらう等してフィードバックをおこなう。また、地域の防災に関するワークショップあるいは勉強会の機会を利用して、外国人住民の防災について考えることの重要性を多くの人に知ってもらえるようつとめる。 ポイントは、「やさしい日本語」が特別のものではなく誰にでも使えるようになることが重要である点を明確に示すことである。また、家具の固定、防災グッズの常備、避難所や避難経路の確認、連絡手段の確認等、日頃の備えについての理解が外国人住民には不十分である点を意識した地域の防災教育が必要である。 以上の点を踏まえて、秋に予定されている日本語教育学会四国支部集会において、成果あるいは途中経過の報告ができるよう、取り組みを進める予定である。教育関係者を交えたワークショップ等の取り組みにも積極的に計画したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本語日本文化教育研究会での発表は、当初、代表者と分担者と2名で行く予定だったのが、業務の都合で代表者のみが行ったため、旅費が一人分少なくなった。また、文房具等についても、当初の見積もりよりも安価になったため、差額が生じた。来年度は学外でのワークショップ等も予定しているため、会議室の借用費等に充て、適切に使用する。
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