研究課題/領域番号 |
17K12615
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西原 三佳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (70712107)
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研究分担者 |
大西 眞由美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (60315687)
中村 安秀 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (60260486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 復興期 / 子育て / ソーシャルサポート / 母子保健 |
研究実績の概要 |
本調査は、東日本大震災の復興過程において、被災地での育児ソーシャルサポートの現状を明らかにし、復興過程における子育て支援対策強化への知見を得ることを目的としている。平成29年度は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科での倫理委員会承認を得たのち、調査地である岩手県気仙地域において、インタビュー調査ならびに視察を実施した。インタビュー調査では、行政の母子保健担当保健師および子育て支援センター職員、さらに民間の子育て支援団体を対象に、主に業務や活動を通じて見える育児の現状や、課題と考える事について半構造的インタビューを実施した。その結果、復興後のまちづくりの過程において、子どもの遊び場や買い物ができる場所が限られるなど、子育てに関する日常生活や物理的環境の変化が継続している事、またコミュニティが変化し地域全体での子育ての見守りが難しい、といった現状が語られた。また、三世代同居が多い一方で子育て世代の転入者が多い現状や、世代間交流が減少しているといった、コミュニティにおける関係性の変化についても語られていた。さらに、気仙地域母子保健関係者等連絡会に参加し、保健・医療・福祉関係者との意見交換を通じ、対象地域における母子保健・子育て支援に関する取り組みの現状について把握した。これらのことから、東日本大震災から7年が経過した現在も復興過程にある被災地においては、物理的あるいは社会的環境変化が継続しており、被災地での子育てにそれらの要因が少なからず影響を与えていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビュー調査を実施し対象地域における子育ての現状および支援者が考える課題について聞き取りを行った。当初計画では母親へのインタビュー調査も同時に実施する予定であったが、平成30年度実施へ変更することとした。これは、当初計画において、長期間続いている復興工事がある程度進み、道路や交通が整い日常生活が変わってくる、あるいは子育て支援センター等が仮設から恒久的な場所に設置されたり、公園などの安全な遊び場が増えるなど、子育てに関連する様々な環境要因が整う見通しがつく時期にインタビュー実施を想定していたものであったが、復興工事の進捗状況を鑑み、次年度への実施へ変更したものである。しかし、研究全体の進捗への影響は少ないため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象地域の復興状況を鑑み、復興過程における子育ての現状把握と課題を明らかにする。平成29年度に実施したインタビュー調査結果から、子育て世代の転入者が多い現状が把握されたが、転入してきた母親は子育てに関する環境やサポートの状況、ニーズが異なることが想定される。平成30年度は、転入してきた母親や震災前から居住している母親など社会的背景が異なる母親へのインタビュー調査を実施し、それぞれのニーズ把握を行うと共に、子育ての現状や育児に関するソーシャルサポートの獲得状況、近隣住民とのコミュニケーションなどに関する現状を明らかにする。また対象地域で乳幼児を持つ保護者を対象とした量的調査を実施し、平成27年度に実施した調査結果と比較することで、復興期の子育て状況の変化の有無を明らかにし、復興期における子育て支援対策強化への示唆を得る。
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