最終年度である本年度は、国内外におけるコロナ感染拡大の影響を受け、予定していたASEAN、欧州等における現地調査が実施できず、国内におけるインタビュー調査も制約を受けざるを得なかったが、テレビ会議システム等を利用して、被災地における関連事業者や支援機関等へのフォローアップ調査について実施した。これらを踏まえ、日本中小企業学会(西部部会)において、本研究にかかる総括的な研究報告を実施したほか、先行事例の分析結果として、阪神淡路大震災が地域経済に与えた影響と復興課題を分析した共著を公刊した。 本研究では、熊本地震(2016年)が自動車産業集積やサプライチェーン(SC)に与えた影響と、復旧・復興に向けた課題について中心的に検討してきた。熊本地震は、日本製造業が東日本大震災を契機に取り組んできたSCのリスク・マネジメントの有効性が問われる機会でもあったが、実態調査の結果からは講じてきた対策・蓄積が少なからず機能したことが確認される反面で、ソフト・ハード両面で依然として克服すべき課題が少なくないことが明らかとなった。例えば、SCの頑健性からは、調達や生産の複線化が望まれるが、製品の成熟化や生産量から分散化が困難なことも多く、安全在庫の確保や復旧力の強化などの対策を組み合わせざるを得ないことが浮き彫りとなった。また代替生産を実現するうえで、代替物流網の構築の重要性も明らかとなった。 あわせて本年度には、共著(「サプライチェーンのリスクマネジメトと組織能力」)に対し、事業継続推進機構より、我が国におけるBCPの普及に貢献したとして、BCAOアワード2019「普及貢献賞」の表彰も受けた。
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