本研究は情報通信における理論限界等の解明を主な目的とするものである.特に研究開始時点では,量子力学を用いた情報通信の仕組みやDNAを情報記憶媒体とする仕組みなどの,次世代情報システムにおける基礎理論構築が焦点としていたが,期せずして,より一般的に多くの情報システムに共通して適応可能な理論限界の導出が可能であることが判明した.中でも,デジタル情報の文脈において最も代表的な雑音のモデルであるビット反転と情報消失の効率的同時処理に必要な資源量と,X符号と呼ばれる特殊な情報圧縮技術に用いられる数学的構造との間の関係の発見が重要で,これにより双方の分野でこれまでに知られていなかった理論限界を導出した.
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