研究課題/領域番号 |
17K12640
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
河内 亮周 三重大学, 工学研究科, 教授 (00397035)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 秘密同時通信プロトコル / 条件付き秘密開示プロトコル / 符号ベース公開鍵暗号 / 通信計算量 / 事前共有乱数長 / 確率解析 |
研究実績の概要 |
計算内在暗号化技術の発展として,秘密計算の実用上重要なモデルである秘密同時通信プロトコルおよび条件付き秘密開示プロトコルにおける必要十分な通信ビット数および事前共有乱数ビット数の解析を行った.秘密同時通信プロトコルとは各参加者の秘密情報を明らかにせずに暗号メッセージをそれぞれ評価者に送り,評価者が参加者の秘密情報から計算できる関数値を暗号メッセージから計算するプロトコルである. 秘密同時通信プロトコルおよび条件付き秘密開示プロトコルにおいて必要な通信ビット数と事前乱数ビット数の一般的な関係性を明らかにした.その応用として,任意の関数を計算する秘匿同時通信プロトコルにおいて,評価者が関数に依存しない設定での必要十分な通信ビット数および十分な事前乱数ビット数は既に解析されていたが,その関係を用いることによって,必要な事前乱数ビット数を証明し,既知のプロトコルが事前乱数ビット数について最適であることを示した.また秘密同時通信プロトコルおよび条件付き秘密開示プロトコルの両方において重要な具体的関数に対する必要な通信ビット数,事前乱数ビット数を明らかにした. またこれまでの秘密同時通信プロトコルを量子通信が可能なモデルである秘密同時量子通信プロトコルに拡張し,その能力と限界の解析を行った.特に,秘密同時量子通信プロトコルの必要な通信ビット数の解析,および事前乱数の代わりに事前共有エンタングルビットを用いることで,従来の通信モデルで必要な通信ビット数を下回る通信ビット数で秘密同時通信が実現可能であることを示した. さらに加法準同型性暗号の一つである符号ベース公開鍵暗号HQCにおいて,その復号誤り確率はこれまで実験的にしか評価されていなかったが,今回の研究成果として得られた新たな確率解析技術により厳密な理論的評価を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算内在型暗号化技術の発展として高度な応用プロトコルの研究を行う予定であり,本年度においては秘密同時通信プロトコルと条件付き秘密開示プロトコルについて昨年度の結果を発展させた結果を得ることができた.特に秘密同時通信プロトコルについては,これまで議論されていなかった新しいモデルへの拡張を行い,従来モデルと比較した上でその具体的な性能の理論的解析を得ることに成功しており,進捗状況はおおむね順調であると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
秘密同時計算プロトコルの安全性を高めたモデルとして,参加者の一部と評価者の結託を許す非対話型秘密計算プロトコルがある.今回の秘密同時計算プロトコルに関する解析の技術や量子通信を許すような新しいモデルに対する応用の可能性を検討し,その効率の可能性と限界について解析を進めたい. また新型コロナウイルス感染症拡大の影響で今回の成果についての発表や今後の共同研究のためのディスカッションが順調に行えなかったため,予算繰り越しを行った.今後の状況にも依存するが,この予算に基づいて本年度行えなかった研究発表活動や研究打ち合わせを実施することを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で今回の成果についての発表や今後の共同研究のためのディスカッションが順調に行えなかったため,予算繰り越しを行った.今後の状況にも依存するが,この予算に基づいて本年度行えなかった研究発表活動や研究打ち合わせを実施することを検討している.
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