研究課題/領域番号 |
17K12642
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
深作 亮也 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 助教 (40778924)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 数式処理システム / 計算代数 / 包括的グレブナー基底系 / 限量子消去 / 実閉体 / エルミート二次形式 |
研究実績の概要 |
包括的グレブナー基底系 (Comprehensive Groebner System; CGS) を利用した「世界一速い限量子消去 (Quantifier Elimination; QE) 計算プログラム」の構築を目指して、以下成果 (1) - (3) を得た。研究代表者は数式処理システムMaple上で自身が開発しているQEプログラムCGSQEにこれら成果を実装し、それをウェブサイト上で公開した。等式制約が多い場合、本プログラムは他QE計算プログラム (Reduce; Mathematica、Resolve; Mathematica, QEPCAD等) より高速に計算できる。 (1) 国内学会JSSACで「根基イデアルに対するエルミート二次形式」について講演した際、極小エルミート二次形式を提案し、2017年度奨励賞を受賞した。本研究ではパラメータ付き根基イデアルによって簡素化された等式制約による「エルミート二次形式」を目指したのだが、極小エルミート二次形式によって根基イデアル計算なしでエルミート二次形式の簡素化が実現された。 (2) 論文誌MCSに投稿した「On Multivariate Hermitian Quadratic Forms」が採択された。本論文では効率的なパラメータ付き飽和イデアルの包括的グレブナー基底系計算が実現された。 (3) 国際会議ISSAC2017に投稿した「On continuity of the roots of a parametric zero dimensional multivariate polynomial ideal」が採択された。7月にアメリカで発表する予定である。本論文ではパラメータ付き零次元多変数多項式イデアルの根の連続性に関する成果が示された。本成果によってパラメータ空間の分割が簡素化された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
包括的グレブナー基底系を利用した限量子消去法に関するこれまでの成果をまとめた論文を投稿できた。特に、研究代表者が数式処理システムMaple上に開発している限量子消去プログラムCGSQEはこうした論文によって更なる効率化が果たされた。従って、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考えている。詳細は以下 (1) - (3) の通りである。 (1) 国内学会JSSACで奨励賞を受賞した講演「根基イデアルに対するエルミート二次形式について」で提案した極小エルミート二次形式に関する上記限量子消去計算効率化に対する効果は大きいと思われる。今後、パラメータ付きの場合に対する詳細な考察を与えることで、上記限量子消去への応用に関する理論が完成する。この理論の完成によって、上記プログラムは更なる効率化を果たすと考えられる。 (2) パラメータ付き飽和イデアルの包括的グレブナー基底系計算は上記限量子消去法の計算効率に大きな影響を与える。従って、論文誌MCSに採択された論文「On Multivariate Hermitian Quadratic Forms」によるパラメータ付き飽和イデアルの包括的グレブナー基底系に関する計算効率化が果たした上記プログラム効率化への貢献は大きい。 (3) 国際会議ISSAC2017に採択された「On continuity of the roots of a parametric zero dimensional multivariate polynomial ideal」によってパラメータ空間の分割が簡素化された。この簡素化によって、効果 (2) が更に改善された。
|
今後の研究の推進方策 |
以下方策 (1) - (3) を実現することによって「包括的グレブナー基底系を利用した限量子消去法」に関するプログラムの更なる効率化を目指す。現状として、このプログラムは入力に等式制約が多い場合、非常に効率的である。今後は以下を達成することで、等式制約が少ない場合にも他限量子消去プログラムを計算量で圧倒できるようにしたい。 (1) 平成29年度、国内学会JSSACで奨励賞を受賞した講演「根基イデアルに対するエルミート二次形式について」で提案した``極小エルミート二次形式''を上記限量子消去法に適用するための理論を完成させる。本理論を完成させるため、根基イデアルを法とした剰余環の基底が持つ性質に着目することを検討している。 (2) 簡素な等式制約を持つ入力に対する限量子消去計算は効率化しやすい。特に、上記限量子消去法以外の手法も同様の傾向を持っている。今後は計算機上で実現可能な「パラメータ付き代数的集合の既約分解アルゴリズムに関する理論」の構築を目指す予定である。そして、等式制約の簡素化を達成することで、上記限量子消去法の効率化を目指す。更に言えば、こうしたアルゴリズムを上記以外の限量子消去法にも適用することを検討している。 (3) 平成29年度、マルチコア搭載の計算機を購入した。このマルチコア搭載計算機を使うことで、上記限量子消去法の並列計算化を行うことを検討している。本方策では高い効果を得られるような並列計算を計算機実験によって探す。高い効果を得られるような並列計算を探す際、機械学習等も応用したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた書籍が絶版になってしまったため、次年度使用額が生じた。
|
備考 |
上記URLにて包括的グレブナー基底系を利用した限量子消去プログラムを公開している。
|