研究課題/領域番号 |
17K12643
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
岩田 陽一 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 助教 (10784902)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / FPTアルゴリズム / 分枝限定法 / 動的計画法 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、昨年度からの続きとして半整数緩和を用いた分枝限定法に関する研究を行った。昨年度はMultiway Cut問題などに対する半整数緩和を高速に解く増大路アルゴリズムを得たが、全ての制約を充足させる判定問題を解く際に用いられる「unit-propagation」という手法の拡張としてこの増大路アルゴリズムを捉えることにより、新たに2-SAT型の制約に対しても適用範囲を広げることに成功した。ここまでの成果は理論計算機科学分野のトップ会議であるFOCS 2018に採択され、発表を行った。 次に、半整数緩和以外の下界を用いる分枝限定法の例として、Feedback Vertex Set問題に関する研究を進めた。この問題は実用上は半整数緩和による下界よりも「次数による下界」を用いた分枝限定法の方が有効であることが知られているが、実はこの分枝限定法が計算量的にも優れていることを示すことに成功した。解析の更なる改善を引き続き行っている。 また、分枝限定法とは異なる枝刈りによる高速化として、シュタイナー木問題に対する枝刈り動的計画法を開発した。シュタイナー木は、与えられたターミナル点集合を最小コストで連結にする方法を求める問題で、様々な実用的応用があり、整数計画法を用いた実用上高速な解法が知られていた。本研究では、ターミナル数が小さい場合に理論上高速に動作する動的計画法を用いた解法をベースに、連結性条件から導出される下界を用いた枝刈りを取り入れ、実用上の性能を大幅に改善することに成功した。本手法を用いたソルバーが競技会PACE Challenge 2018にて1部門優勝、1部門準優勝を果たし、また本手法をまとめた論文が人工知能分野のトップ会議であるAAAI 2019に採択され、発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画の半整数緩和のみならず、他の下界を用いた枝刈り手法についても、理論上高速であることの証明および実用上の性能改善を得ることに成功した。また、競技会での成績によって実性能の高さを実証することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
まずは現在進めている「次数による下界」を用いた分枝限定法の計算量解析に関する研究を更に進め、発表を行う。次に、「重み付き」の問題に対する研究を行う。分枝限定法の理論解析を進めたことで、新たな進展が得られたとともに、難点も見えてきた。その一つが「重み付き」の問題を扱えないことである。現在の解析は、各分岐で最適解と下界とのギャップが一定量以上必ず減少する、ということを示すことにより、探索の深さが最適解の大きさで抑えられるという方針で行っており、重み付きの場合に適用することが出来ない。一方で実用上は重み付きの場合でも高速に扱うことが出来ており、このギャップを理論的に埋める方法を考案する。
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