研究課題/領域番号 |
17K12644
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
吉良 知文 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (50635860)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動的計法法 / 保育所マッチング / セキュリティゲーム / 物流システム / 展開形ゲーム / 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大規模なマルコフゲームの均衡点を計算する動的最適化技術を構築し、様々なステークホルダーが含まれる社会的課題に対して、公平で納得度の高い制度や施策を設計する方法論としてのマルコフゲームアプローチを確立することである。令和2年度の主な実績は以下の4点である。 (A)研究室所属学生らとの共同研究において、前橋市のあるバス路線に着目し、時刻表の改善策の検討をおこなった。他の交通機関との接続、遅延の発生、目的地が異なる複数の利用者の利便性を考慮すると、確率最短路問題を含むマルコフゲームを解く必要があり容易ではない。解決には至っていないが、限定的な仮定の下、改善方策の提案をおこなった。 (B)昨年度に引き続き、ゲーム理論の枠組みと大規模な実問題を解く計算技術で、物流業界の全体最適化に貢献することを目標として、日本パレットレンタル株式会社と共同研究をおこなった。今年度は複数企業による荷物の混載を許す場合に焦点を当てて、連携・協働するメリットが高い企業同士を高速に抽出するアルゴリズムの開発およびその正当性の証明をおこなった。 (C)昨年度に引き続き、群馬大学の教養教育において、1年生1118人のそれぞれを44の授業題目(クラス)のいずれかに割り当てる抽選作業(マッチング)をおこなった。今年度は、全学生を第3希望以内に割り当てるためには、授業題目ごとの受入人数などの制約条件を緩和する必要があり、最小手数の緩和策を自動で算出する定式化をおこなった。実際に緩和策が採用された。 (D)動的計画法は、最適停止問題と呼ばれる問題を解く上で有効な解法であり、古典的秘書問題に対しては線形計画法による解法も知られている。これら2つの解法が双対関係にあることが最近、他の研究者らによって明らかにされている。この双対関係とマルコフ決定過程に対する双対理論の関係性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も限られた時間の中で、社会に貢献する成果を出すことができた。また、社会実装の実現力を持った企業との連携をさらに深めることができた。 一方、コロナウイルスの影響による学術会議の開催中止などもあり、成果を発表するという部分については当初計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
社会的課題に対して、真に実利あるソリューションを生み出す方法論としてのマルコフゲームアプローチを確立するために、当初の計画どおり研究実施期間を通じて、社会の現場と協働して以下の(1)~(4)のプロセスを一貫して実施する。 (1)社会的課題の問題状況とステークホルダーの意思決定をマルコフゲームとして定式化する。 (2)定式化したマルコフゲームを効率良く解くアルゴリズムを構築し実装する。 (3)マルコフゲームの解を元に、公平で納得感のある制度や施策を設計する。 (4)制度や施策をフィールド実装し効果を検証する。必要があれば (1) へフィードバッグをおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も企業からの支援が得られた。また、研究分野の理論を大学業務に活用したことで、学内予算の追加配分も得られた。一方で、新型コロナウイルスの影響により、学会や会議が中止もしくはオンライン開催となったため、出張を取りやめたことにより残額が生じた。 (使用計画)国際会議で研究成果を発表したり、論文を発表するための費用に充当する。
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