本研究の目的は、大規模なマルコフゲームの均衡点を計算する動的最適化技術を構築し、様々なステークホルダーが含まれる社会的課題に対して、公平で納得度の高い制度や施策を設計する方法論としてのマルコフゲームアプローチを確立することである。(研究期間を1年間延長した上での)最終年度である令年3年度の主な取り組みと実績は以下の3点である。 (A)これまでの研究成果の総括をおこなった。 (B)昨年度に引き続き、ゲーム理論の枠組みと大規模な実問題を解く計算技術で、物流業界の全体最適化に貢献することを目標として、日本パレットレンタル株式会社と共同研究をおこなった。昨年度の成果である「複数企業による荷物の混載を許す場合に、連携・協働するメリットが高い企業同士を高速に列挙するアルゴリズム」について、一部不備が見つかった。不備の修正とともにアルゴリズムの大幅な見直しをおこない、正当性の再証明をおこなった。協力(混載)することによる効果が一定以上ある企業の組合せをすべて列挙する際に、動的最適化の技術を用いて、効果の上界を算出することで、枝刈り(探索する組合せの除外)を効率よくおこなうものである。さらに、細部を整理して特許出願までおこなうことができた。 (C)昨年度に引き続き、群馬大学の教養教育において、学生1120名のそれぞれを47の授業題目(クラス)のいずれかに割り当てる抽選作業(マッチング)をおこなった。第4希望以降の授業題目に割り当てられる不幸な学生をゼロにするために、第1希望に割り当てられる学生を敢えてどれくらい減らす必要があるか、という指標に着目すると、今年度は過去3年度とは異なる傾向を実インスタンスから観察した。
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