本研究の目的は補助変数を活用した統計モデリング法の開発であり,2019年度までに有用な補助変数を選択するための情報量規準を提案し,その研究内容を含む論文が国際雑誌に掲載されている.また,多変量解析などの関連分野においても成果を得ている. 本年度は当初,多変量解析において変数の一部が補助変数である場合の補助変数の活用方法や,高次元データにおける補助変数の活用方法について研究する予定であったが,他の関連分野で進展があったためそちらを重点的に進めた.具体的には,外れ値に対してロバストな推定が可能となるガンマダイバージェンスを用いた際の説明変数の選択アルゴリズムに関する研究を行った.説明変数の数が多い高次元データにおける変数選択問題では,情報量規準を用いて最適な説明変数の組み合わせを総当たり法で計算することは計算時間の観点から実用的ではないことが知られている.そこでガンマダイバージェンスによる推定を,総当たり法に比べて計算負荷の小さな貪欲法と組み合わせて変数選択手法を提案した.この研究内容は科研費シンポジウムで発表している. また,昨年度から進めていた多変量解析の分野における研究についてもいくつか進展があった.まず,国際雑誌に投稿していたbilinear random coefficientsを持つ成長曲線モデルに関する論文が採択された.さらに,多変量線形回帰モデルにおけるCpタイプ規準量の漸近的性質に関する研究も論文としてまとめ,国際雑誌に投稿している.多変量線形回帰モデルにおける変数選択では,全ての目的変数に関して共通の説明変数を用いることがしばしば仮定されるが,本研究ではその条件を緩和した状況下でCpタイプ規準量の漸近有効性を示している.
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