局外パラメータを含む統計モデルのパラメータ推定問題の歴史は長い.指数型分布族のように局外パラメータの十分統計量が存在する場合,十分統計量を所与とした条件付き分布に基づく推定量が統計的によい性質を持つことが知られている.しかし,条件付き分布の規格化定数は計算に適さない形であることが多く,実用上の障害になっていた.ダイバージェンスという幾何学的概念とマルコフ基底という代数統計由来の概念を組み合わせることにより,規格化定数の計算を経ないで興味あるパラメータを推定する方針が得られたことは,大きな意義も持つものである.
|