研究課題/領域番号 |
17K12652
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
劉 言 京都大学, 情報学研究科, 助教 (10754856)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 統計科学 / 時系列解析 / 統計的検定論 / 漸近理論 / 経験尤度 / 分位点 / ブートストラップ / 欠損値解析 |
研究実績の概要 |
不規則に観測される時系列データや大規模に観測される時系列データに対する統計解析が重要になってきている。これらの時系列データに対する統計解析に関する基礎理論を整備し、時系列データのパラメーター推測問題、欠損値を含む時系列のモデリングとその欠損に関する検定論および高次元時系列の共分散行列の構造分析について研究した。 (1)不規則観測時系列データに対し、乖離度という観点に着目した母数的解析を展開した。とくに新たに提案した乖離度はLp空間における予測誤差を最小化するものである。本乖離度に基づく推定関数は、調和可能安定過程を周波数領域で解析するときに自然に導かれることを明らかにした。これらの研究結果を日本数学会統計数学分科会の特別講演で報告した。また調和可能安定過程の頑健性をもつ予測法や補間法について研究し、論文にまとめた。さらに、対称安定過程を含む時系列データに対する統計的解析方法を整理した。とくに周波数領域を中心に近年で考案されている経験尤度法や分位点法の利用や変化点検出問題への適用等を著書にまとめた。 (2)欠損値を含む時系列の統計解析においては一般化線形 ARMA モデルという定常性を必要としない定式化を行った。欠損の特徴に対する検定論ではラオ検定を提案した。このモデリングにおいても検定統計量がウィルクス現象の枠組みに入ることを確認し、数値解析を行った。数値シミュレーションでは、ケンモア・スクエアの一酸化炭素記録の欠損がその一日前のデータに依存しているという面白い結果を得ている。 (3)高次元時系列データの枠組みで球面性検定の統計的理論を展開した。通常の検定統計量を時系列データに適用する際、漸近分散がモデル依存であることが判明し、独立同分布を仮定して検定を行うと大きな問題となる。この問題に対するブートストラップ法を検討している。また関連する研究結果については論文や研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、安定過程を含めた時系列の統計解析を総合的にまとめることができた。不規則観測時系列で提案した乖離度を調和可能安定過程の予測問題に結びつけたことから、時系列データに対するパラメーター推測問題をより俯瞰的に展開することが出来た。これに加えて高次元時系列データ解析も諸方面から展開し、理論的成果を得ており、充実しつつある。関連研究成果も著書や論文の形でまとめることが出来ていることから、研究計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画の通りに研究を推進する予定である。欠損値を含む時系列と局所定常時系列の関連性が明らかになりつつあるので総合的に展開していきたい。また局所定常時系列や高次元時系列に対するリサンプリング法の定式化を行ったので、その理論的研究を計画通りに完成していく。また理論面のみならず、経済・金融・遺伝子等の分野へ手法の適用や連携を深めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究計画通りに助成金を使用したが、前年度の「次年度使用額」をそのまま次年度使用額へ回すこととなった。これまでの研究成果は国際的に評価されており、国際連携を図る為、次年度使用額を外国旅費で使用する予定である。
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