本研究では,ソフトウェア開発プロジェクト管理における品質保証・評価への支援を念頭に,ソフトウェア信頼性評価指標の区間評価に焦点を当てた多次元ウェーブレット解析によるソフトウェア信頼性評価方法の提案を目的としている. 最終年度では,まず,ソフトウェア信頼性評価指標の区間推定を行う提案手法の再評価並びにアルゴリズムの再構築を行った.ソフトウェアフォールト検出過程をモデリングする非同次ポアソン過程のシミュレーション方法を8種類実装し,観測データからサンプルを生成するために必要な時間と区間推定値の統計的性質を基準にパフォーマンス評価を行い,幅広く使われていた Thinning 法よりも有効な Order Statistics 法を選定した.この結果をもとに推定アルゴリズムを再構築し,提案手法による高速なソフトウェア信頼性評価指標の区間推定を実現した.研究成果を関連分野の一流学術雑誌(Journal of Systems and Software)に投稿し査読中である. 次に,ソフトウェア開発プロジェクトにおける意思決定を支援する簡易評価ツールの開発に関しては,当初は数式処理ソフトウェア Mathematica を用いる予定であったが,利用の簡便性を念頭に再検討を行った結果,R 言語による実装に方針転換した. さらに,ウェーブレット解析をソフトウェア信頼性の区間推定に応用した研究の新規性や有用性などが評価され,日本国内学会の機関誌から特集解説記事の執筆依頼があった. 加えて,本研究で培ったソフトウェアメトリクスデータに関する知見をもとに,本研究の副産物として,ソフトウェアメトリクスを考慮したソフトウェア信頼性モデルやソフトウェアメトリクスデータを取り入れたソフトウェア開発工数予測方法の提案を行い,初期成果を国内外の学術会議において発表を行った.
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