多様なステークホルダが関わる近年のシステム開発においては、システムのディペンダビリティに関する合意形成が極めて重要である。本研究では、ステークホルダ間の関係をステークホルダネットワークとして定義し、そのステークホルダ個々の関係において合意形成を行うための手法「D-Caseステップ」を提案した。本年度では、ツール開発に加え、手法の有効性を確かめるため、企業の方を対象としたワークショップを8回、合計116名の参加を得、実施した。その結果、手法の有効性を確認するとともに、ワークショップ開催におけるファシリテーションの重要性などの知見を得ることができた。これらの結果は、D-Caseステップ、開発したツール(ホームページで無料公開中である)の普及につながると考えている。現在はD-Caseステップを超上流において適用することの検討を企業の方と検討している。またD-Caseワークショップは企業における合意形成に関する社内研修として実用化される見込みである。また、本年度では新たな展開として、機械学習システムに対するシステム保証の枠組みとして、D-Case手法として従来から提案しているモニタリング機構を試験的に実装した。この実装により、開発したツールは複数のステークホルダが共同してアシュアランスケースを記述できることに加え、モニタリング機構を用いた動的な保証ができるようになった。現在、自動車会社の方と、モニタリング機構による自動運転システムの保証に向けた議論を開始している。以上により、本研究の目的であった合意形成手法としてのD-Case手法の展開、普及は一定の成果を出したと考える。
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