研究課題/領域番号 |
17K12665
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
和田 康孝 明星大学, 情報学部, 准教授 (40434310)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 仮想環境 / 電力性能最適化 / ソフトウェアフレームワーク / 機械学習・深層学習 / クラウド・エッジ連携 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,クラウドコンピューティング基盤において必要不可欠となっている仮想環境において,仮想マシン上で動作するアプリケーションの特性に基づいて仮想マシンの配置やCPUの動作周波数等を最適化し,システム全体の効率を向上させることを目的としている.特に,仮想マシン上で動作するアプリケーションの特性や実行状況に関する情報を取得して適切に最適化を行うために,並列化コンパイラ等を用いてアプリケーションの解析情報を利活用することを特徴とする. 2018年度においては,2017年度に構築した実験環境を単一ノードから複数ノードに拡張し環境構築をさらに進めるとともに,オープンソースのクラウド環境構築基盤であるOpenStackの実装およびKVMやlibvirt等における仮想デバイスの制御方法を考慮しつつ,仮想マシン上のアプリケーションと実ハードウェアの協調動作を行う仕組みおよびインタフェースについて検討を進めた. また,今後のクラウド基盤はいわゆるエッジと深く連携していくものと予想され,画像処理や認識等を対象とした機械学習・深層学習がその中で有望なアプリケーションであると考えられる.このような状況を考慮して,FPGA等のアクセラレータを備えるエッジとの連携を考慮したアプリケーションに対する初期検討も行なった. コンパイラ等のソフトウェア環境については,アプリケーションの特性とハードウェアの性能・電力モデルを元に電力制御コードをアプリケーションに埋め込むソフトウェア環境の拡張を行った.従来よりも複雑な性能・電力モデルに基づいた最適化が行えるように改善がなされている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における主な研究対象は,a)仮想環境の基盤ソフトウェア,b)クラウド・エッジの連携を考慮したアプリケーション,c)アプリケーションの解析・最適化を行うソフトウェアフレームワーク,の3点に集約することができる. a)では,オープンソースソフトウェアであるOpenStackおよび周辺のライブラリ群を対象に機能拡張のための調査を進め,仮想マシンと実ハードウェアの連携を実現するために必要となる追加機能の検討を行なった.今後,仮想環境を実現するKVMやlibvirt等の機能を一部拡張し,実現する方針である. b)に対しては,自動運転等を想定した画像認識処理をエッジ側のFPGAにて行い,そのための学習処理をクラウド基盤側で行う,という形式のエッジ・クラウド連携を想定し,実アプリケーションを意識した性能評価方法の検討を行なった.FPGA上で画像認識を行う一連の開発実行環境を整備し,利用できるようにした. c)においては,実ハードウェアの実行性能と消費電力の関係をモデル化した上で,入力アプリケーションの特性と与えられた電力バジェットを元に,CPUの動作周波数等を決定・最適化するためのソフトウェアフレームワーク"PomPP Library and Tools"の拡張を進めた.主として,最適化の手法および電力性能モデルを記述するためのDSLの拡張について検討を行なった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに調査検討を行なった結果に基づき,まずは仮想マシン上のアプリケーションから実ハードウェアに対して動作周波数等の制御を行うための要求を通知する仕組みを実現する.また,仮想マシンモニタ側ではそれを集約し,実際の制御をどのように行うかを判断できるようにする.このとき,アプリケーションの最適化を行うソフトウェアフレームワークからは実ハードウェアと当該アプリケーションの特性・関係を考慮した最適化を行うが,各アプリケーションからの要求を集約することで,仮想マシンに対する制御,実ハードウェアに対するDVFSの適用方法を適切に判断することが可能と考えている. 最終的に上記機能を実装した環境にて,特に深層学習のための学習処理を想定した評価を行う計画である.また,その成果を国内外の学会等で発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内開催の学会等での成果発表を想定していたが,発表のための成果取りまとめに時間を要しており,次年度使用額が生じた.2019年度において成果の発表を行うための学会参加費・旅費等として使用する予定である.
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