本研究課題では,クラウドシステムを実現する基盤である仮想環境の低消費電力化を目的として,アプリケーションの特性に応じた消費電力制御手法,および複数の仮想マシンが動作する状況を考慮した物理ハードウェアの制御方式,について研究開発を行った. アプリケーションの特性に応じた電力制御を行うため,並列アプリケーションのプロファイリングおよび電力制御のためのAPIを埋め込むソフトウェアフレームワークを拡張し,より高精度に消費電力と実行性能のモデル化を行う手法を検討した.その結果,単純な線形の電力・性能モデルと比較して,アプリケーションの実行性能を本来の50%に制限した際の消費電力の予測精度を,およそ3倍程度向上させることができた.この予測に基づいて電力制御を適用することで,アプリケーション実行性能の低下を抑えつつ,効果的にシステムの消費電力が削減できる. さらに,各仮想マシンから物理ハードウェアを直接制御する方式ではセキュリティが担保できない,各仮想マシンは互いに独立して動作するため互いの情報を直接やり取りできない,といった問題点を解決しつつ,仮想環境の低消費電力化を実現する仕組みについて研究開発を行った.本研究では特に,クラウドシステムに広く用いられているOpenStackやその基盤となるQemu,KVM等を対象にして検討を進めた.その検討結果に基づき,仮想マシンから物理マシンのホストOSに対して動作周波数制御の要求をそれぞれ通知し,それに従ってホストOSが物理ハードウェアを制御する仕組みを提案し,その初期プロトタイピングを行った.複数の仮想マシンの状況に応じた簡単な制御を実現することができた. 今後は引き続きこれらの手法を統合し,物理ハードウェアの制御手法やアプリケーションの電力性能モデルの構築手法を,プラグインとして拡張可能なシステム・フレームワークとして実現することを目指す.
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