本研究は、同一空間上に多数の無線LAN通信が存在しチャネル干渉により互いに影響し合う環境において、各通信が周辺のチャネル利用状況を把握し活用することで空間全体の通信性能を向上させることを目的としている。 平成30年度は、ベンダーが市場に投入しているアクセスポイント (AP) は、チャネルボンディング及びフレーム集約技術に関連する動作と各種パラメータが異なることが確認できたため、これらのAPが競合する環境においてどのような影響が発生するか調査を行った。具体的には、競合する通信に対して適切なチャネル幅を選択する動的チャネルボンディング(DCB)に対して、フレーム集約技術のパラメータやボンディングの動作の違いからチャネルの占有時間が異なる通信を競合させた場合の通信性能を調査した。その結果、DCBの通信に他の通信が競合する環境では、従来の静的チャネルボンディングと比べてフレーム衝突が発生する可能性が高く、通信性能が著しく低下する可能性があることを確認した。そのため、異なる無線LAN規格および異なるパラメータの機器が混在する環境では、各通信の公平性を保証するための仕組みを導入する必要があることを明らかにした。 さらに、DCBの通信に対して競合する通信が存在する場合における各通信間の公平性を改善するためのフレーム集約数決定方式を提案した。具体的には、DCB使用時にフレーム送信毎に利用可能なチャネル幅に合わせてフレーム集約数を動的に調整することで、各通信のチャネル占有時間に対する公平性を改善する。シミュレーション評価より、適切な集約数を用いて通信する提案手法を用いることで各通信間のチャネル占有時間の公平性を改善できることを示した。また、スループット性能に着目すると、DCBの通信は、競合する通信への影響を最小限に保ちつつ、固定の集約数を用いる場合よりも性能を改善できることを明らかにした。
|