本研究は、一般ユーザ自身が持つスマート端末を活用し、都市地域の情報を取得可能とする参加型センシングにおいて、情報発信主体の擬態化というアプローチを採用することで、ユーザプライバシ問題とユーザのセンシング参加への動機づけ問題を同時に解決することを目的とした。本研究の結果、擬態化の対象をセンシング対象空間の特徴を有したキャラクタ(ロケーション・モンスターと呼ぶ)とすることにより、上述した問題解決とともに、キャラクタのコレクション等ゲーム性の付与による楽しさの向上、空間およびそのコミュニティへの愛着の向上を実現する。また、本研究が対象とする参加型センシングの手法を応用し、実際の都市運用の効率化を目指し、神奈川県藤沢市において職員参加型センシングを構築し、その効果と利点・欠点を評価することとし、さらに、本研究で取得する情報を含む都市センシング情報のスケーラブルかつアクセス権を考慮した情報基盤の構築を目指した。 擬態化を用いた参加型センシングに関して、iOS及びAndroidアプリケーションとして実装を行い、キャンパスおよび藤沢市において実験を行った。結果、本提案手法が提案手法を利用しない場合より、ユーザの情報発信に関するモチベーションが向上し、また情報の質も変化させられることがわかった。これらの手法を論文としてまとめ、発表を行い、情報処理学会UBI研究会優秀論文賞および2018年度山下記念研究賞を受賞した。また、本研究に付随し実施を行った行政職員を対象とした参加型センシングシステムに関する論文は、その有用性から情報処理学会DICOMO2018において優秀論文賞を受賞した。更に、本研究の基盤として構築した情報流通基盤システムは、情報処理学会MBL研究会において優秀論文賞を受賞した。上記のように、本研究成果は受賞を含め高く評価されるとともに、実際の社会の課題解決に寄与することが示された。
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