近年,大規模災害の発生時など通信インフラのない劣通信環境下における通信技術の研究が盛んに行われているが,これまでの研究ではすべてのノードが協力的であることを前提としており,ネットワークを破壊するような攻撃をほとんど考慮していない.しかし,実際には,ネットワーク内に攻撃を仕掛けるノードが潜んでいる恐れがあり,劣通信環境下における既存技術は攻撃に極めて脆弱である.そこで,劣通信環境で発生する特有の攻撃を複数想定し,それらの対策を提案することで,攻撃耐性を備えた高信頼・高セキュアな通信システムの確立を目指し研究を遂行してきた.前年度までに,アンチパケットと呼ばれる応答情報を偽造するアンチパケット偽造攻撃,不必要なメッセージを拡散するフラッディング攻撃,経路情報を偽造する経路情報偽造攻撃,メッセージの内容を偽造するフェイクメッセージ偽造攻撃の対策について検討を行い,複数の対抗策を提案してきた.2020年度はこれらの前年度までに行った研究成果を踏まえた上で,これらの対抗策の改良を行った.具体的には,フェイクメッセージ攻撃の対策として,正常な転送回数をカウントすることで攻撃端末を特定する手法や,場所の情報を利用した対抗策についても検討を行った.さらに,複数の攻撃が同時に発生するような状況における対抗策についても取り組んだ.これらの研究成果は,英文論文誌への投稿,国際会議や国内研究会で発表を行っている.
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