研究課題/領域番号 |
17K12680
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
山崎 託 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (40775243)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アドホックネットワーク / センサネットワーク / Opportunistic Routing / 負荷分散 / 転送領域制御 |
研究実績の概要 |
本年度は,研究課題である(1)転送領域の拡大縮小制御,(2)転送領域の選択制御,(3)輻輳を回避するための負荷分散制御についての検討を行った. (1)の転送領域の拡大縮小制御では,昨年度得られた研究成果等への追加検討として,端末の複数伝送速度を考慮した通信制御を提案した.本手法では,端末が自律的に適切な伝送速度を決定することで,転送領域を適応的に設定することを可能とした.また,モバイル回線を用いたP2P通信を併用した位置情報に基づく転送領域制御を提案した.本手法では,モバイル通信を用いて制御情報を交換することで,効率的な転送領域制御を実現した. (2)の転送領域の選択制御では,通信資源消費の偏りを抑制するため,蟻の採餌行動から着想を得た手法である蟻コロニー最適化を応用した省電力経路制御手法を提案した.本手法では,蟻コロニー最適化を応用し最短経路を用いながら特定の経路に電力消費が偏らないように転送領域選択を行うことで電力消費を分散し,ネットワーク寿命を延長を実現した.また,無線電力伝送を用いることで端末協調を促す省電力経路制御手法を提案した.本手法では,複数の経路から電力負担の小さい経路を選択することで,省電力な経路選択を行うことで中継端末における電力負担の低減を実現した. (3)の輻輳を回避するための負荷分散制御では,通信環境が良い領域に負荷が集中する問題を解決するため,真正粘菌の採餌行動から着想を得た負荷分散経路制御手法を提案した.この手法では,真正粘菌の数理解析モデルを応用し経路がもつ容量と送信データ量に応じて適応的な負荷分散を実現した.また,この手法について詳細な解析を行い,通信環境の偏り,通信環境の変化,送信データ量の変化等による影響について評価を行い,様々な環境において本手法が適応できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,昨年度の研究計画に基づき,転送領域の拡大縮小制御に関する追加検討に加え,転送領域の選択制御,及び負荷分散を考慮した制御についての研究を行った. 上記実施概要における(1)では,伝送速度の側面から適切な転送領域制御を行う手法とモバイルネットワークを併用した転送領域制御を効率化する手法の提案を行い,それらの影響についての評価を行うことができた.従って,実施概要における(1)においては,複数の側面から複数の制御手法の提案を実現できており,その結果として多面的な評価を行い,国内学会において発表を行った. 上記実施概要における(2)では,生物模倣を用いることで省電力化を実現するための効率的な転送領域選択を行う手法を実現し,その制御がネットワーク寿命に与える影響について評価することができた.また,1件の学術論文誌,1件の国際会議,その他国内学会において発表を行った. 上記実施概要における(3)では,生物模倣を用いることで効率的に複数経路に通信負荷を分散する手法を実現し,その制御が与える影響や効果を詳細に評価することができた.また,1件の学術論文誌,1件の国際会議,その他国内学会において発表を行った. 従って,上記の理由から当初の研究計画以上の成果と進展が得られていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究計画に基づき,(1)転送領域の拡大縮小制御,(2)適応的なパラメータ制御について追加の検討を行う予定である. (1)では,様々な観点から効率的な拡大縮小制御の検討を行ってきた.そのため,その検討の中からいくつかの手法に着目し追加の検討及びその解析を行う予定である. (2)では,転送待機時間に基づくOpportunistic Routingにおける動的なパラメータについての検討を行ってきた.そのため,以前より検討を行っているパラメータ制御について追加の検討及びその解析を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーションや実装のための機器購入の費用を計画に入れていたが,その他機器を流用できたため,購入を見送った.2019年度における追加シミュレーションや実装等を実施していくための機器購入の費用に充てる予定である.
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