本年度では研究計画に基づき,(1)転送領域の拡大縮小制御,(2)各手法の協調的な制御,(3)適応的なパラメータ制御の研究を行った. (1)転送領域の拡大縮小制御については,本研究課題において,様々な観点から検討を実施してきた.本年度は,端末性能や通信環境などの変化から,実環境では端末間のリンクが非対称となる点に着目した.このような非対称リンクがある場合,片方向には通信が可能であるものの,逆方向からは通信が難しく,転送制御に悪影響を与えることが分かっている.本研究では,本研究課題で扱っているOpportunistic Routingにおいても悪影響が発生することを確認し,このようなリンクが存在する場合には,そのリンクを迂回できるように転送領域を拡大することで,非対称リンクを回避する手法を提案し,通信性能を向上させることができた. また,(1)に加え(2)各手法の協調的な制御として,昨年度検討した移動体通信を協調的に用いることで,端末数や端末位置に基づき転送に用いる領域を決定する手法について,詳細な評価を行い,本年度は端末密度や偏りを考慮することで負荷の分散を実現する手法について提案を行った. (3)適応的なパラメータ制御については,1年目と2年目の進捗状況から,既に具体的な方式の検討を開始していたが,本年度では,既に提案したパラメータ制御手法の効果や特性を詳細に把握するための既存の評価結果の解析,端末の通信性能と通信環境の変化がパラメータ制御に与える影響を評価するためのシミュレーションを実施した.これらにより得られた結果に基づきフィードバックを行うことで,それら手法の詳細な制御の改善や再考,適切に評価を行うためのシミュレーション等を再度実施した.
|