研究課題
本研究課題では、日本発の超並列固有値解析手法であり、近年活発に研究が進められている複素モーメント型固有値解法に着目し、アルゴリズムレベルでの耐障害性の実現を目的とし、同解法の理論的誤差解析を通し数理的耐障害技術を開発する。また、実用化を目指した利用性向上のため、発生した障害に合わせたパラメータの自動最適化技術についても併せて開発を進める。本研究課題の成果は、次世代スーパーコンピュータ上での長時間シミュレーションの実現に寄与し、幅広い応用分野において、従来困難であったシミュレーションの大規模化・高精度化につながることが期待される。平成30年度は、本研究課題で開発を進める耐障害技術の基盤となる「複素モーメント型超並列固有値解法の障害発生時の理論誤差解析」を平成29年度に引き続き行うとともに、理論誤差解析を基盤とし「耐障害技術の開発」を中心に研究を進めた。本研究課題では、複素モーメント型超並列固有値解法のアルゴリズムレベルでの数理的耐障害技術の開発が目的である。チェックポイントリスタートや冗長計算などの従来の耐障害技術は時間的・物理的冗長性を利用し、アルゴリズムの耐障害性を実現している。このため、計算量が大きく並列性の高い部分に対していは必ずしも有効とは言えない。これに対して、アルゴリズムの障害発生時の数理的誤差解析に基づき、アルゴリズムの計算コストの主要部かつ並列性の高い部分に対して、時間的・物理的冗長性を利用しない新しい耐障害技術の開発を行った。また、複素モーメント型固有値解法に基づく精度保証付き数値計算法の開発も併せて進めた。本研究課題の研究成果を複数の国際会議等で発表するとともに、論文にまとめて投稿を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度の主な研究計画は「複素モーメント型超並列固有値解法の障害発生時の理論誤差解析」を平成29年度に引き続き行うとともに、理論誤差解析を基盤とし「耐障害技術の開発」であった。現在までの達成度として、当初計画通りアルゴリズムの耐障害技術を開発し、数値実験によりその有効性を示した。また、新たに複素モーメント型固有値解法に基づく精度保証付き数値計算法の開発も併せて進めた。また、研究成果について国際会議等で発表を行った。
平成31年度以降は、これまでの数理的耐障害技術の開発に併せて、別の理論背景に基づく耐障害技術として、「高次複素モーメントおよびArnoldi型外部反復を利用した耐障害技術の開発」を進める。本研究課題では、主にアルゴリズムの障害発生時の誤差解析に基づく耐障害技術の開発を進める。これに加えて別の耐障害技術として、複素モーメント型固有値解法を対象の固有ベクトルに対する(近似)写像であると捉え、Krylov部分空間法の一種であるArnoldi型の反復を適用する技術を開発する。研究成果は国内外の学会・研究会で発表を行い、学術論文にまとめる。
参加・発表を予定していた国際会議について、次年度以降に開催される別の会議に変更したため。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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