研究課題/領域番号 |
17K12692
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
南畑 淳史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 産総研特別研究員 (70754787)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 精度保証付き数値計算 |
研究実績の概要 |
次元数の大きい悪条件連立一次方程式に対しての高精度に精度保証付き数値計算を行う場合には二つの難しさがある。それは次元数と悪条件性により近似解と真の解の誤差を過大に評価してしまうことである。平成29年度は従来の誤差評価アルゴリズムで次元数が原因で過大評価している箇所を特定し、次元数の高い問題でも高精度に誤差評価を行うアルゴリズムの構築を行い、その評価を行った。具体的には従来法ではrank-one行列で上限を見積もっていた箇所をH行列の判定を行うベクトルに適した誤差評価式で定式化を行った。その結果として一万次元程度の悪条件連立一次方程式において、従来法に比べて十倍以上も小さく誤差が見積もれる誤差評価のアルゴリズムが構築できた。 また、この誤差評価アルゴリズムを応用して、行列積の有効丸めと事前誤差評価式を用いた精度保証付き数値計算法に対しても改良法を提案した。行列積の有効丸めと事前誤差評価式を用いた場合、区間の中心が単位行列から離れることに着目して、誤差評価式を構築し、平成29年度に開発したアルゴリズムを適用することで、従来の誤差評価のアルゴリズムよりも1.6倍も小さく誤差が見積もれる誤差評価のアルゴリズムが構築できた。 さらに、悪条件な連立一次方程式の研究に関連して、単精度作成された近似逆行列がどの程度の条件数を下げる効果があるのかについての研究を行った。理論解析と数値実験結果よりある条件数を境目に次元数の影響が大きくなり、条件数を下げる効果が低減することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は順調に進んでいる。 当初予想していた大規模向けの誤差評価のアルゴリズムに加えて、特別な場合の誤差評価のアルゴリズムの構築にも成功している。また、研究計画に関連して悪条件な連立一次方程式に関しても新しい研究結果を得られており、研究計画は順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画通りに高精度な内積アルゴリズムの構築を行う。また共同研究者や精度保証付き数値計算のソフトウェア開発者と活発に議論を行い、研究を遂行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アルゴリズムの構築などの理論研究を優先したため、今年度は実験用のPCの購入が必要がなかった。次年度は構築した様々なアルゴリズムの実験を行うため、繰り越した費用をPCの購入費用として使用する。
|