研究課題/領域番号 |
17K12693
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
辻 美和子 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (80466466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 性能推定 / コデザイン / ネットワークシミュレータ |
研究実績の概要 |
システムとアプリケーションのコデザインにおいては,将来システムのパラメータをさまざまに変化させ,アプリケーションの性能推定が行われる.本研究では,実システムから得られた通信トレースに基づいて将来システムの通信シミュレーションを行う性能推定手法を,将来システムが現行システムよりも大規模な場合でも適用可能にする方法論 SCAlable Mpi Profiler (SCAMP) を提案している. サイズ M の現在システムから得れらたM個のトレースを用いて,サイズ N (N>>M) の将来システムの通信シミュレーションを行うために,本研究では,実トレースを将来システムのサイズを勘案して編集し,N個の疑似トレースファイルを生成する. 本年は,比較的簡易なアプリケーションを対象として,自動的に疑似トレースファイルを生成するために,ソースコードの中間表現を解析して,実トレースの自動編集を行うツールを開発した.本ツールでは,ソースコードを,オープンソースのコンパイラLLVMを用いて,その中間表現に置き換え,(1) 通信性能推定に必要な命令のみを抽出し,(2) これを実行可能形なプログラムにコンパイルし (3) 将来システムのサイズや編集対象の実トレースをなどを与えて実行する.このプログラムは,実行時に通信命令があった場合,実際の通信の代わりに,実トレースの編集作業を行うことで,疑似トレースを生成する. 実験を行い,1つあたりの疑似トレースの生成が,実際のアプリケーション実行と比較して十分に高速であること確認した.また,これらの疑似トレースを用いた性能推定が,将来システムにおける通信性能を近似することを確認した.また,理論的な演算数の変化を勘案した疑似トレースファイル生成に付いても検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度にプロトタイプして実装した疑似トレースファイルを自動生成する手法を実装し,大規模な実験で検証したとともに,国際会議で成果を発表した.昨年度に課題として提示した演算性能推定を提案手法に導入する手法について,先ずは理論演算値を用いる手法を検討した.
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今後の研究の推進方策 |
演算性能推定を提案手法に導入する手法について引き続き検討する.推定時間と推定精度のトレードオフを考慮し,精密なCPUシミュレータと,おおまかな見積もりを高速に与えるツールを併用する計画である.CPUシミュレータとしてはポスト京向けに開発された「理研シミュレータ」を用いる予定である.高速ツールとしては,ASPENなどを候補として検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議として欧米を想定した金額を申請したが,たまたま航空券などが安いアジア地域で適切な会議があったためにそちらに投稿し参加したため.同会議は,参加費も想定よりも安価であったため.2019年度に,性能予測手法を研究する米研究者との議論および情報収集のための旅費などとして利用予定.
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