研究課題/領域番号 |
17K12701
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今泉 修 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (60779453)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 主体感 / 能動的運動 / 行為 / 個人内相関 / 時間認知 |
研究実績の概要 |
自己が行為の主体である感じ(主体感)と時間認知の関連について心理学的に研究した。能動的な行為とその行為結果の時間間隔が,受動的行為である条件にくらべて短く感じられるインテンショナルバインディング効果(以後バインド)が知られている。バインド量が主体感の潜在的指標として用いられてきたが,顕在的な意識上の主体感と個人内相関することを示していた昨年度のデータを論文化して,国際誌に掲載した。今年度は,さらにこのデータを統計的因果推論によって分析することで,バインドが顕在的主体感を起こすという因果的関係が示唆された。 さらにバインド量と顕在的主体感の個人間相関(個人差)の有無については,数々の先行研究で検討されていたものの,結果がまちまちであり結論が得られていなかった。そこで私はメタ分析を行った。その結果,実験方法の異質性や研究数の少なさという欠点はあるものの,信頼できる結果として弱めの正の相関が示された。この個人間相関にまつわる問題は,大規模実験などを通じてさらに検討し,これまでの議論に決着をつける予定である。 他方で,外界に何かをもたらしたり打ち消したりする(例:音を鳴らしたり鳴っている音を消したりする)行為結果の二面性による,主体感への影響も検討した。多数の実験の結果,行為が何かをもたらす場合のほうが打ち消す場合よりも,バインド量や顕在的主体感が生じやすいことが示唆された。この成果を論文にまとめてプレプリント公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新しい知見を示唆するいくつかの実験結果を得たが,論文化に至っていない研究もあるため。当初予定していた実験のいくつかを遂行できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を論文にまとめる。インテンショナルバインディングと顕在的主体感との関係について追加実験で検討する。研究計画に含まれていた運動の時系列における時間認知の系列的変化についての研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆や掲載にかかる諸費用が,論文執筆の遅れによって消費されていないことが主な理由である。その分,次年度の論文化の過程において掲載費等に充当する予定である。
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