研究実績の概要 |
線虫は原始的な脳を有しており,その全神経細胞レベルでの活性の定量化は脳における情報処理のメカニズム解析のステップとして非常に重要である.代表者ら は線虫の全神経細胞規模の撮影データから神経細胞活性の自動定量化をすでに実現している.一方で撮影された神経細胞核が解剖図上のどの細胞なのかを決定す ること(アノテーション)は,神経細胞1つ1つの役割を理解する上で不可欠であるものの,非常に難しく,現状では専門家の労力を要する課題である.本研究で は,神経細胞核撮影データに対するアノテーションを高精度で自動化することを目指している.他の研究グループによる先行手法が十分な精度が達成できない主 要な原因として,既にアノテーション済みの撮影データから神経細胞配置図を作成する際に細胞位置のばらつきの原因となる線虫の撮影時の体位の違いと細胞位 置の個体差を区別していないという点が挙げられる.その結果,アノテーションの手本となるべき神経細胞配置図が線虫の体位変化や個体差による細胞位置のば らつきを含んだ状態で計算されることになり,アノテーション精度の低下を招く.今年度は,昨年に引き続き,アノテーションの基礎となる非線形点群位置合わせ手法である Bayesian Coherent Point Drift (BCPD) [Hirose, 2021] および BCPD++ [Hirose, 2021] の改良を行った.この内容をまとめた論文が機械学習・人工知能関連のトップジャーナルである IEEE TPAMI 誌に採択された.
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