研究課題/領域番号 |
17K12715
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大倉 史生 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60754223)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酪農 / 歩行映像解析 / 蹄病 |
研究実績の概要 |
本年度は、より実際的な酪農現場でのデータ取得を目指し、研究協力者で獣医師の酪農学園大学 中田健教授の協力の下、酪農学園大学の構内で最大の牛舎(60頭規模)において牛の三次元歩行映像の撮影・蓄積を行った。また、年度後半には、国内最大級の商用環境の牛舎(1200頭規模)の協力の下、三次元映像の撮影を実施した。両環境における撮影を通じて、数百頭規模の個体番号・健康状態スコア・三次元歩行映像列の取得に成功した。これは、国内のみならず世界的に見ても非常に貴重なデータセットである。 前年度は、様々な歩容特徴表現を用い、乳牛の蹄の疾病である跛行を早期に発見するための検出手法を構築し推定精度の比較を行った。具体的には、蹄の状態を5段階で表すロコモーションスコアについて、スコア2(軽度の跛行)の段階で発見するアルゴリズムを開発した。今年度は、前年度より大規模なデータセットに基づき、前年度に構築された軽度跛行の検出手法を改良し、撮影時の自動診断システムの構築を開始した。具体的には、特に大規模な商用牛舎環境においては、乳牛が広い通路を自由に歩行することになり、健康状態スコアや個体分離が困難となることがある。これらの問題に対処するための前処理の自動化および、跛行スコア推定に不向きな映像(歩行していないなど)の排除を自動化することにより、牛舎環境での継続的な撮影を通じた実用システムの実現に近づけた。 長期撮影に基づく新たな歩容特徴については、特に人物の映像解析に対する寄与が大きいと考え、特に高齢者の認知症の早期検出を対象とした歩容解析アルゴリズムを設計した。特に、被験者の慣れや経時変化が顕著に現れており、興味深い知見が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界的に稀に見る規模の乳牛映像データセットの構築が行われつつある。また、乳牛の蹄病解析についても具体的な実用化を見据えた自動化システムの構築が始まっており、社会実装の一端が見えてきた。長期撮影に基づく歩行映像解析についても(対象は異なるが)進んでおり、研究が順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、乳牛の歩行解析システムの実用化を見据え、以下の項目の研究を重点的に遂行する: 1)乳牛歩行解析の自動システム化 大規模牛舎における実運用を見据え、乳牛の撮影、歩行映像からの個体識別、個体分離、跛行スコアの推定、可視化を含めたシステムの構築を目指す。特に、大規模牛舎における個体分離の高精度化を実現し、より多くの環境で研究成果を活かせるようなシステムを開発する。 2)中・大規模牛舎における継続撮影の実現および時系列歩行映像データセットの構築 100頭規模以上の中・大規模牛舎における継続的な撮影を行うとともに、個体番号・健康状態スコアを紐づけたデータセットの構築を目指す。現時点で、100頭規模の牛舎での継続撮影は行われておらず、本データセットが完成した場合、画像解析の酪農応用における世界唯一のデータセットとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で予定している継続的な撮影環境について、前年度までに予定していたより大規模な牛舎環境での設置が可能となるめどが付いた。そのため、改めて調整を実施し、実際の設置を次年度に行うこととし、撮影システムに係る物品費、設置・メンテンナンスに係る旅費を次年度に使用する。
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