研究課題/領域番号 |
17K12716
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
藤ノ木 健介 東海大学, 理学部, 准教授 (80613629)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウェーブレット / フレーム / 非線形近似 / 画像復元 |
研究実績の概要 |
2019年度は昨年度から取り組んでいる研究テーマを深堀して、さらなる検討を進めた。 1)可分ヒルベルト空間におけるフレームについて研究を行った。具体的には二乗可積分空間(含部分空間)におけるフレームの代表的な具体例である、並進フレーム、ガボールフレーム、ウェーブレットフレームの3つについて調査研究を行なった。特に、フレームと信号処理の関連性に着目し、二乗総和可能な数列空間におけるフレームと多次元のマルチレートフィルタバンクとの関係や、二乗可積分空間における多次元マルチウェーブレットフレームの条件とそれを拡張するユニタリー拡張原理について調査した。さらに、これらのレビュー結果を踏まえて、多次元マルチレートリフティングスキームの拡張定理を提案し、論文に投稿した。 2)2次元のウェーブレット変換について研究を行った。昨年度に可能性を見出したデータ解析のアプローチである、データを点列として扱うことでより柔軟な枠組みの中でデータ解析を行う線形変換の開発について、画像の4近傍画素の相関を分析するハールライク直交変換を提案した。従来のハール変換はハールウェーブレットをテンソル積で2次元にしたものから得られ、画像を2×2のブロックに分けることで各ブロックの4画素を平均成分と3つの差分成分の合計4画素に分解する変換であった。本研究では従来のハール変換を拡張し、画像を2×2のブロックではない4画素ごとの互いに素な部分集合に分割することで、各部分集合ごとにハール変換と類似する直交変換を行う方法を提案した。提案手法において、部分集合への分割方法にはいくつかの候補が存在するが、この選択肢が画像処理へ与える影響について、画像の非線形近似と復元問題に対して計算機数値実験によって比較検討を行なった。その結果、部分集合の組み合わせによっては、従来法よりも良好な結果が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度遅れていた多次元化および一般化について進展があり、遅れを取り戻すことができた。しかし一方で、昨年度に得た方位選択性を有する2次元重複ウェーブレット変換の応用上の有効性を示すための数値実験による検証がまだ十分ではないといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため、当初の研究計画を達成できるように、現在進行中のテーマを継続するとともに、これまでの実績をまとめる方向性で研究に取り組む。遅れている方位選択性を有する2次元重複ウェーブレット変換の数値実験をさらに進め、成果を論文としてまとめる。出張が可能な状況になったら、研究成果を積極的に対外発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、年度末に予定していた出張が中止になったため。また、学内で英文校正助成事業が新設され、投稿論文の英文校正に関する人件費・謝金の支出を大幅に抑えることができた。新型コロナウィルスの影響は次年度も続くと予想されるが、今後の出張がキャンセルになっても研究計画を遂行できるように適宜支出計画を見直して、臨機応変にこの状況に対応したいと考えている。
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