研究課題/領域番号 |
17K12733
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
近井 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60758431)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / 触覚 / 質感情報 / 人間計測 / 痛み |
研究実績の概要 |
本研究では、医療現場での痛み感覚の客観的評価手法の提案と、言語化された痛み感覚の表現を客観化(数値化)するための指標を構築することを目指している。これに向けて、振動刺激や温度刺激といった複数の物理刺激を組み合わせて触覚を生成し、対象者へ刺激を呈示することで痛み感覚を惹起させることができる触覚刺激呈示装置を開発し、その有効性を明らかにすることを目的とする。当該年度は、体表面に対する一定した触覚刺激を呈示し、触覚感覚の評価(閾値計測)を行うことが可能な触覚刺激呈示装置を活用した評価実験の結果をまとめ、個人間での触覚知覚特性の違いを客観化できるパラメータの検討を行った。さらに、医師・理学療法士などの医療従事者との意見交換において、臨床現場での検査機器の活用という視点で、システムの要求仕様について尋ねたところ、操作性・可搬性・視認性(データ閲覧のしやすさ)が必要であり、これらを併せ持つシステムが望まれている、という現場のニーズを得た。そこで、開発を進めている触覚刺激呈示装置を臨床現場で活用するため、装置を駆動させるためのインタフェースをタブレット端末へ代替することを可能とし、ユーザ自身で操作・データの閲覧をすることができるシステムの検討を進めた。評価結果から、タブレット端末でのシステムに対する操作入力を可能とすることで操作性の向上を実現させ、今後の臨床現場での活用についての知見を得た。他方、社会情勢の影響から、臨床現場での実験実施が困難となったが、今後の展開について医師・理学療法士との意見交換を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、社会情勢により、ヒトを対象とした実験を行うことができなかったが、これまで取り組んだ単一刺激の触覚刺激呈示装置に関する評価実験、および触覚刺激呈示装置のタブレット化に向けてのユーザビリティ評価についての結果についてもまとめ、臨床現場やベッドサイドでの利用についての知見を得た。加えて、臨床現場での実験実施に向けて、医師・理学療法士との意見交換を進め、今後の実験計画についての準備を進めていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、医療従事者と議論を進めながら、今年度実施予定であった日常生活中で知覚異常に悩む方々を対象としたヒアリングおよび評価実験についても、社会情勢を踏まえて計画を進める。そして、年齢や既往歴や原疾患などを考慮したうえでの触覚知覚特性をまとめ、本研究で得た知見を基礎として、医療現場での痛み感覚の客観的評価手法の構築を目指し、本研究の社会的応用を見据えて取り組んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、前年度に試作を進めた触覚刺激呈示装置を用いた評価を実施予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、医療現場での研究計画およびヒトを対象とした実験計画に大きな制限を受けたことから、実験を進めることができなかったため、未使用額が生じた。このため、当初の予定であった、触覚刺激呈示装置を用いたヒトを対象とした計測実験を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることを計画している。
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