令和2年度では,許可構造を考慮した線形コスト関数をもつ協力ゲームの効率的なシャプレイ値計算アルゴリズムを提案した. このアルゴリズムは,令和1年度に提案した協力ゲームのモデルに対する解法で,協力ゲームの解概念の一つであるシャプレイ値を効率的に求められる. 一般的に,シャプレイ値の計算には限界効用と呼ばれる値を全てのプレイヤーの順列に対し計算し,得られた限界効用の平均を取ることで得られる.この方法では,プレイヤーの数がnとするとn!かかるため,効率的に解くことはできない.本提案アルゴリズムではHarsanyi dividendを用いたシャプレイ値の表現を用いて効率的にシャプレイ値を計算した.このHarsanyi dividendを用いた表現では,任意のゲームがある部分ゲームの線形結合として表現でき,かつそのような表現がユニークであることが知られている.部分ゲームの線形結合として表現できれば,シャプレイ値がもつ線形性より,真のシャプレイ値は各部分ゲームのシャプレイ値の線形結合として得られる.しかし,この部分ゲームの線形結合による表現を求めることは一般的には簡単ではない,なぜなら部分ゲームの数が一般的には2^n個になるためである.この計算にはメビウス反転公式が効率的に計算できることが重要であり半順序集合と非常に相性が良いことが知られている.一方で,本研究で扱う許可構造はエージェント間の優先順序を表現した構造であり,半順序集合に似た構造をもつ.本研究はこの性質を利用することで,線形結合に用いる部分ゲームの個数が高々n個で良いことを示した.
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