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2017 年度 実施状況報告書

相転移描像による圧縮センシングの限界解明とその打破

研究課題

研究課題/領域番号 17K12749
研究機関東京大学

研究代表者

中西 義典  東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00767296)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード圧縮センシング / 交差検証 / 相転移 / 統計力学
研究実績の概要

研究期間の初年度である平成29年度は圧縮センシングの限界解明に向けた基礎的な研究を行った.具体的には,計測ノイズが無視できるようなデータに基底追跡法(Basis Pursuit)と呼ばれるアルゴリズムを用いて真の信号を推定する場合の圧縮センシングついてその成否を判定する手法を提案した.基底追跡法は,各信号成分の絶対値の和(L1ノルム)を最小化することにより,信号を推定するアルゴリズムであり,多項式時間で実行できることから無ノイズ圧縮センシングの分野では非常によく用いられる.
本研究では,統計数理手法である交差検証を用いて,真の信号をあらかじめ与えられていないという実用的な場合でも,圧縮センシングが成功しているか失敗しているかを判定する手法を提案した.交差検証とは,はじめに現有データを訓練データと検証データの二つに分け,次に訓練データのみを用いて信号推定を行い,最後にその推定結果を用いて検証データをどれだけ正しく説明できるかを評価し,検証誤差として定量化することである.その手順に正解の情報を用いていないので,実用に耐える成否判定手法となることが期待される.実際に,統計力学のレプリカ法を用いて検証誤差の振る舞いを解析した.特に訓練データと検証データの比率に応じて検証誤差がどのように振る舞うかに着目した点がこれまでにない新しい点であり,その漸近的挙動を冪と比較することにより圧縮センシングの成否を判定できることを明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成29年度の目的である圧縮センシングの限界解明に向けた基礎的な研究は着実に進んでいる.研究実績の概要で述べたように基底追跡法による無ノイズ圧縮センシングの成否判定手法の開発に成功した.交差検証という古くから知られている手法を,全く新しい目的・用途で使った点も評価され,複数の国際会議,国内会議でも招待講演等を行い,その有用性も認知されつつある.現在,統計力学解析を合わせて原著論文としてまとめ,英文学術雑誌に投稿・改訂中である.
また,アルゴリズムによらず使える交差検証の汎用性に着目し,提案手法が別のアルゴリズムを用いた圧縮センシングでも機能することを数値実験により明らかにした.これにより,計算時間のような副次的な理由だけでなく,推定結果の信頼性という本質的な理由により,圧縮センシングに用いる信号推定アルゴリズムを選べるようになることが期待される.こちらは当初の計画では平成30年度に実施する予定であったが,既に英文学術雑誌に受理されている.

今後の研究の推進方策

今後は圧縮センシングの限界解明に向けた発展的な研究を行い,さらに限界を打破することを目指す.特に平成30年度は計測ノイズを無視できないようなデータに対しても提案手法を適用できるように拡張する.計測ノイズを考慮に入れる場合はLeast Absolute Shrinkage and Selection Operator (LASSO) と呼ばれるアルゴリズムが用いられる.基底追跡法と同様L1ノルムを正則化項として用いる手法である.LASSOを用いる場合正則化パラメータを適切に決める必要があり,このパラメータを適切に設定するために交差検証を用いられる背景があったことから,交差検証を活用した提案手法とも親和性が高いと考えられる.

次年度使用額が生じた理由

本研究で得られた成果を発表した講演のいくつかが招待講演となり,旅費の支出が抑えられたため次年度使用額が生じた.翌年度以降の使用計画は,提案手法が幅広く有効であることを調査するため,少し専門から外れた分野の書籍の購入費や学会・研究会への旅費に充てる.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] ES-DoS: Exhaustive search and density-of-states estimation as a general framework for sparse variable selection2018

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Yasuhiko、Ichikawa Hiroko、Nakanishi-Ohno Yoshinori、Takenaka Hikaru、Kawabata Daiki、Eifuku Satoshi、Tamura Ryoi、Nagata Kenji、Okada Masato
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 1036 ページ: 012001~012001

    • DOI

      10.1088/1742-6596/1036/1/012001

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Influence of Averaging Preprocessing on Image Analysis with a Markov Random Field Model2018

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto Hirotaka、Nakanishi-Ohno Yoshinori、Okada Masato
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 87 ページ: 024802~024802

    • DOI

      10.7566/JPSJ.87.024802

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exhaustive Search for Sparse Variable Selection in Linear Regression2018

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Yasuhiko、Takenaka Hikaru、Nakanishi-Ohno Yoshinori、Uemura Makoto、Ikeda Shiro、Okada Masato
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 87 ページ: 044802~044802

    • DOI

      10.7566/JPSJ.87.044802

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Data-driven diagnosis for compressed sensing algorithms2018

    • 著者名/発表者名
      Nakanishi-Ohno Yoshinori、Hukushima Koji
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Bayesian inference of metal oxide ultrathin film structure based on crystal truncation rod measurements2017

    • 著者名/発表者名
      Anada Masato、Nakanishi-Ohno Yoshinori、Okada Masato、Kimura Tsuyoshi、Wakabayashi Yusuke
    • 雑誌名

      Journal of Applied Crystallography

      巻: 50 ページ: 1611~1616

    • DOI

      10.1107/S1600576717013292

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] LASSOに関する交差検証誤差の訓練/検証データ量比依存性2018

    • 著者名/発表者名
      中西(大野)義典
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
  • [学会発表] 陽電子回折データからベイズ推論をするためのモデリング2018

    • 著者名/発表者名
      中西(大野)義典
    • 学会等名
      第2回陽電子回折研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 圧縮センシングとその成否診断2017

    • 著者名/発表者名
      中西(大野)義典
    • 学会等名
      東京大学物性研究所理論インフォーマルセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 圧縮センシングによる準粒子干渉計測の高速化・高分解能化2017

    • 著者名/発表者名
      中西(大野)義典
    • 学会等名
      2017年真空・表面科学合同講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Data-driven diagnosis for compressed sensing algorithms2017

    • 著者名/発表者名
      Nakanishi-Ohno Yoshinori
    • 学会等名
      International Meeting on "High-Dimensional Data-Driven Science"
    • 国際学会
  • [学会発表] 交差検証による圧縮センシング成否診断法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      中西(大野)義典
    • 学会等名
      日本物理学会2017年秋季大会
  • [学会発表] Data-driven diagnosis for compressed sensing with sparse modeling2017

    • 著者名/発表者名
      Nakanishi-Ohno Yoshinori
    • 学会等名
      Workshop 'Development of next-generation quantum material research platform'
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 放射光X線回折とベイズモデリングの融合による表面・界面科学の新展開2017

    • 著者名/発表者名
      中西(大野)義典
    • 学会等名
      第4回放射光連携研究ワークショップ
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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