研究実績の概要 |
本研究は,現在までの信号から将来の信号値および信号源の状態を予測・識別する時系列予測ニューラルネットワークの開発を目的とする.そして,提案ネットワークを生体信号予測・容態推定へ応用することで,予測に基づく医療モニタリングへの足掛かりとする.提案ネットワークには,特に生体信号に現れる複雑な非線形性や非定常性,個人差に対応するための工夫として,(1) 確率モデルに基づく設計,(2) 事後確率に基づく予測と識別,(3) Sparse Bayesian learning, (4) 大規模データを用いた学習を取り入れる.平成29年度は,(1), (2), (4)に関連して,特に識別側に注力し研究を遂行した. (1)および(2) 確率モデルに基づくニューラルネットワークの提案:指数分布族の確率分布に基づく確率モデルとニューラルネットワークへ展開するフレームワークを提案した(Hayashi, MPR 2017).そのフレームワークに基づき,マルコフ性を持つ時系列信号の識別に適したニューラルネットワーク(Hayashi and Tsuji, MIRU2017)や歪んだ分布に従うデータを識別できるニューラルネットワーク(早志ら,PRMU2017)を提案し,生体信号識別へ応用した. (4) Generative adversarial networks (GANs)に基づくdata augmentation:生体信号生成に適したGANsを提案し,data augmentationに応用した.GANsは人工データを生成するニューラルネットワークと,実データと生成データを識別するニューラルネットワークを用い,これらを敵対的に学習させることで質の高い人工データを生成する技術である.本研究では,各ネットワーク構造を再帰型にすることで生体信号特有の時系列性や周期性の再現を可能とした.さらに,提案法により生成した人工データを心電図や脳波識別のための学習データに追加することで識別精度が向上することを示した(Harada, Hayashi, and Uchida, EMBC2018).
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