研究実績の概要 |
本研究は,現在までの信号から将来の信号値および信号源の状態を予測・識別する時系列予測ニューラルネットワーク(NN)の開発を目的とする.そして,提案NNを生体信号予測・容態推定へ応用することで,予測に基づく医療モニタリングへの足掛かりとする.提案NNには,複雑な非線形性や個人差に対応するための工夫として,(1) 確率モデルに基づく設計,(2) 事後確率に基づく予測と識別,(3) Sparse Bayesian learning, (4) 大規模データを用いた学習を取り入れる.令和元年度は,(1), (2), (4)に関連した研究を遂行した. (1) 確率モデルを用いた生体信号の解析・生成に取り組んだ.筋電位信号を混合尺度モデルを用いて表現することで,筋電分布の非正規性と筋力の強さの関係性を明らかにした(IEEE TBME, 2019).また,Generative Adversarial Network (GAN)を心電図や脳波の生成モデルを構築し,生成される生体信号の特性を潜在変数を用いて制御できることを示した.さらに,GANを医用画像生成(IEEE Access, 2020)等へ応用した. (2) 確率モデルに基づき,識別モデルと生成モデル両方の特性を持つネットワークを構築し,半教師あり学習へ応用した(信学技報,2020).また,昨年度発表した高次自己相関を学習的に獲得するNNを画像分割に応用した(ICDAR, 2019). (4) 大規模な医用データセットの構築に取り組んだ.例えば,Cardiotocographyと呼ばれる妊婦の生体信号について,医師の協力のもと3000例を超えるデータを収集し,胎児の状態予測に応用した(信学技報,2019).また,クラスタリングを用いて内視鏡画像を効率よくアノテーションする手法を提案した(MICCAI, 2019)(EMBC, 2019).
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