研究課題
本研究課題では,精神障害における多様な症状を生み出す脳・神経メカニズムをロボット構成論によりシステムレベルで統合的に理解することを目指している.具体的には,不確実性を考慮した予測誤差最小化原理が脳の神経回路における基本的な計算原理であるという仮説を提案し,その仮説を神経回路モデルで具現化し,ロボットに実装することで評価を行う.令和元年度は特に,以下に示す不確実性に関する推定の破綻をもたらす原因の検討を行った.(1)神経回路の階層間の機能的断裂階層的な神経回路における情報伝達の阻害の影響を検討した.具体的には,学習時に結合重みの更新をする際に,上位層と下位層の間の重みに対して一様乱数を加えることで機能的断裂をシミュレートした.その結果,正常時よりも高い不確実性が推定され,それによって重みづけられる予測誤差が減弱することでロボットは外部環境の変化に適応することが困難になるということがわかった.(2)神経活動の過敏さ階層的な神経回路における各ニューロンが有する発火閾値(バイアス)の影響を検討した.具体的には,その分布として正規分布を仮定し分散の値を操作することで,発火閾値の分布が異なる複数の神経回路を用意した.分散が小さい場合は発火閾値がほぼ全て0となるため,神経活動は入力に依存した過敏なものとなる.その分散を上げていくことで,発火閾値に多様性が生まれ神経活動も多様になる.特に分散が小さい場合は,正常時よりも低い不確実性が推定され,それによって重みづけられる予測誤差が増強することでロボットは外部環境の変化に適応することが困難になるということがわかった.これらの結果は,神経・情報処理・行動といった異なるレベルにおける様々な知見を,ロボット構成論的アプローチによって橋渡しをするものであるといえる.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
精神医学
巻: 62 ページ: 219~229
10.11477/mf.1405206009
Proceedings of the 2019 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC 2019)
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