本研究では動作変化と使用者の身体能力、アシスト装具による補助力との関係に着目し、被験者実験と運動解析により、使用者の身体能力とアシストによる動作変化との関係の解明、装具のアシスト力と動作戦略の関係のモデル構築を行い、身体能力とアシスト装具による動作戦略変化との関係を表す推定モデルを構築することを目標とした。 令和4年度は、企業で開発されたアシストスーツのプロトタイプを用いて計測された50名弱の平地歩行動作の計測結果を引き続き解析に利用し、着用者自身の身体能力や歩行特徴とアシスト装具使用時の動作変化の関連性を解析した。 解析結果により、アシスト時の歩行速度の増加は歩幅の増加が主な要因であり、平均的なケイデンスを持つユーザーはアシスト時に歩幅が増加する傾向にあること、下肢の筋力が弱いユーザーはアシスト時にケイデンスや歩行速度は低下するが歩幅の対称性が改善されやすいこと、などの傾向を確認した。さらに、重心位置上下方向のリアプノフ指数を用いて歩行の動的安定性を評価し、ユーザーを分類することによりアシストタイミングを変更することの有効性を確認した。 また、前年度までに開発した慣性センサシステムとワイヤアシストシステムからなる実験用アシストスーツを用いて関節角度推定の検証やアシスト機構のモジュール化を進めた。本成果はユーザーの状態によってアシストの部位やアシスト力を調整可能なモジュール型アシストウェアの実装に繋げる予定である。
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