研究課題/領域番号 |
17K12766
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
ジメネス フェリックス 愛知県立大学, 情報科学部, 助教 (60781507)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ロボット / 認知的徒弟制理論 / 共同学習 / 認識システム |
研究実績の概要 |
本研究では,学習者の応用力や探求心の向上を促す学習支援である認知的徒弟理論に基づくロボットの行動モデルを開発する.また,学習者に学習支援を適切に提供するために,学習者の学習状況やしぐさなどから学習者の心理状態を把握する心理状態認識システムを開発する.そして,学習者に応用力や探求心の向上を促す学習支援ロボットの実現を目指す. H30年度では,Modeling,Coaching,Scaffolding and Fadingによるロボットの行動モデルを構築した.行動モデルにおける学習支援の切り替え基準は,1回の学習で算出される,学習者の全問題における正解率とした.中学生を対象とした被験者実験を実施したところ,行動モデルを実装したロボットは,Modelingのみの行動が実装されるロボットに比べ,学習者に与える学習効果が向上することが示唆された. また,書込認識手法に学習者の心理状態認識システムを構築した.本システムでは,学習者の手を追跡し,文字を書いているかどうかを認識する.これにより,学習者が学習に対して集中できているかどうかを把握できると考える.本システムと,ロボットが学習者の気持ちに共感するような感情を表出する共感表出法を組み合わせ,被験者実験を実施した.その結果,本システムから把握した学習者の集中具合に応じて,共感表出法において感情を表出することで,学習者にロボットから受ける好印象を向上させることを示した。 行動モデルに関する研究において国際会議2件,国内学会2件という成果を上げ,研究内容をまとめ,査読付学術雑誌へ投稿している.同様に,心理状態認識システムに関する研究においても,国際会議2件,国内学会1件という成果を上げ,まとめた研究内容を査読付学術雑誌へ投稿している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度における研究の推進方策に従い,Modeling,Coaching,Scaffolding and Fadingによるロボットの行動モデルを構築し,被験者実験を通して行動モデルの有効性を検証した.また,書込認識手法に学習者の心理状態認識システムを構築し,共感表出法と組み合わせることで,学習者の集中具合を把握できることを示した. 本来の計画では,行動モデルと心理状態認識システムを統合し,被験者実験を通して有効性が検証する必要があるが,本年度において統合まで至らなかった.その理由として,行動モデルおよび心理状態認識システムにおいて問題点および改良点を発見し,それらの解決に取り組んだためである.行動モデルでは,学習者がロボットから提供される学習支援に依存することという問題点があった.心理状態認識システムでは,学習支援を提供するタイミングの基準として,学習者の手の動きを追跡するだけなく,表情やしぐさも踏まえて,学習者の悩み状態を判断できるように改良すべきと見出した.これらは,教育学や画像処理の従来研究を基に解決できると考え,現在では従来研究の調査および予備実験を実施している.
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今後の研究の推進方策 |
H31年度では,まず,行動モデルの改良に取り組む.行動モデルにおける学習支援の切り替え基準は,1回の学習で算出される,学習者の全問題における正解率である.しかしながら,この切り替え基準では,学習者はロボットから提供される学習支援に依存してしまう.この要因として,現在の切り替え基準における行動モデルは,学習者が自身の能力で解決できる問題に対しても,問題の解き方を教示するModelingを提供するからである.これを解決するために,行動モデルにおける学習支援の切り替え基準を,問題一つ一つに対する正解数へ変更する.これにより,学習者が得意な問題には簡潔な学習支援を,苦手な問題には丁寧な学習支援を提供できると考える.基準を変更し,行動モデルが学習者へ及ぼす影響を検証する. 次に,心理状態認識システムを,学習者の手の動き,表情,しぐさから,学習者の悩み状態を判断できるように改良する.これまでの実験から収集した学習者の学習中の様子を基に,機械学習や深層学習を通して,学習者の悩み状態(特別な状態)を検出する.そして,シミュレーション実験および被験者実験を通して,心理状態認識システムが,学習者の悩み状態を検出できるか検証する. 最後に,行動モデルと心理状態認識システムを統合してロボットへ搭載する.そして,被験者実験を通して,学習支援を提供するタイミングの有効性および,行動モデルと心理状態認識システムを搭載したロボットが学習者に及ぼす効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度において大学生を対象に学習実験を実施したが,実験へ参加する学習者の人数を当初の計画通りに確保できなかった.そのため,437円分の研究費を使用することができなかった.次年度において,行動モデルおよび心理状態認識システムの有効性を検証するために,学習実験を実施する.残金は参加者への謝金として使用する.
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