本研究では,学習者の応用力や探求心の向上を促す学習支援である認知的徒弟理論に基づくロボットの行動モデルを開発する.また,学習者に学習支援を適切に提供するために,学習者の学習状況やしぐさなどから学習者の心理状態を把握する心理状態認識システムを開発する.そして,学習者に応用力や探求心の向上を促す学習支援ロボットの実現を目指す. R1年度では,昨年度開発したModeling,Coaching,Scaffolding and Fadingによるロボットの行動モデルを改良した.昨年度の行動モデルにおける学習支援の切り替え基準は,1回の学習で算出される,学習者の全問題における正解率としたが,この切り替え基準では,学習者はロボットから提供される学習支援に依存する問題が起きた.そのため,切り替え基準を,問題一つ一つに対する正解数へ変更した.大学生を対象した被験者実験により,改良した行動モデルを搭載したロボットは,大学生が得意な問題には簡潔な学習支援を,苦手な問題には丁寧な学習支援を提供できるようになり,大学生へ与える学習効果の向上を促せた. 心理状態認識システムでは,被験者実験により収集した学習者の表情を深層学習を用いて分析した.その結果,喜怒哀楽の感情分布を用いることで,学習者の表情から悩んでいる状態の感情分布を推定できる可能性を示した.そして,シミュレーション実験より,本システムは学習者の悩んでいる状態を62%の割合で検出すことが可能であると示した. 行動モデルに関する研究において査読付学術雑誌2編,国際会議1件,国内学会1件という成果を上げた.心理状態認識システムに関する研究では,国際会議および国内学会にて発表予定である.
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