研究課題
がんの治療抵抗性の一因は一つの腫瘍内に異なる変異をもつ細胞集団が存在すること、すなわち腫瘍内不均一性であると考えられている。申請者はこれまでにスーパーコンピュータを用いた超並列がん進化シミュレーション(数十~百万万並列)により、腫瘍内不均一性生成原理の理解を試みてきた。しかしながら膨大なシミュレーションデータの全貌を解析できておらず、その目的を十分に達せられないでいた。そこで、平成29年度は、超並列がん進化シミュレーションにより算出された膨大なデータを可視化するためのツールの開発を行った。m次元のモデルを用いた一回のがん進化シミュレーションの結果は、シミュレーションより得られた一細胞変異プロファイルに対し複数種類、要約統計量を計算することで評価することができる。その際、m次元のパラメータ空間の格子点で並列シミュレーションを行ったとすると、可視化すべき各要約統計量はm階のテンソルで表せられるので、問題はテンソルデータの可視化とみなすことができる。申請者はこれまでにテンソルで表現されるオミックスデータの可視化のためにmultilayer heatmap法を開発しており(Niida et al., Advances in Bioinformatics and Computational Biology, 2013)、本研究の問題にもそれを適用した。具体的には、m次元のテンソルのにおいてm-2次元の値を固定した物をスライス行列と定義し、そのヒートマップをwebブラウザ上で表示し、固定する値をインタラクティブに変更することでテンソル全体を探索できるようにした。また、複数の要約統計量を同画面上で表示し、比較解析できる機能、個々のパラメータセッティング(パラメータ空間の格子点)での一細胞変異プロファイルもインタラクティブに表示する機能も実装した。平成30年度以降このツールを用いて腫瘍内不均一性生成原理の全容解明に挑戦する予定である。
2: おおむね順調に進展している
29年度の計画として、パラメータ-要約統計量関係の回帰分析と可視化を予定していたが、可視化の方が新規性を有し実際のデータ解析に有用だという判断に至り、可視化手法の開発に注力した。
平成29年度に開発した可視化ツールを用いて腫瘍内不均一性生成原理の全容解明に挑戦する。また、がん進化シミュレーションを多領域分割シークエンスによる腫瘍内不均一性データに同化させパラメータ推定及びモデル選択を可能とする進化モデル推定手法の開発を行う。
健康問題により予定していた海外出張を取りやめたため
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