研究課題/領域番号 |
17K12791
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
内田 ゆず 北海学園大学, 工学部, 准教授 (80583575)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オノマトペ / 語義 / コーパス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多様なコーパスを分析し、オノマトペの出現傾向および語義の傾向、新出の語義・用法、オノマトペの語義と文脈情報の関係を明らかにすることである。平成29年度は、分析対象とするコーパスを構築した上で、実際にオノマトペを抽出・分析し、オノマトペの統計情報について得られた知見を学会発表を行うことを計画していた。当該年度はこの実施計画に則り、種々のコーパスにおけるオノマトペの分析を行った。主な研究成果は、以下の2点である。 (1)Webデータと地方議会会議録を対象としてオノマトペの出現傾向やオノマトペの係り先動詞の特徴を分析した。その結果、Webデータは会議録よりもエントロピーが高い傾向にあることが明らかになった。また、ジャンルや文体が異なるコーパスでの動詞「する」に接続するオノマトペの用法、係り先動詞の偏りを比較を行い、新たな知見を得た。 (2)ユーモアの文脈でのオノマトペの用法を明らかにするために、駄洒落に出現するオノマトペの出現傾向を定量的に示し、オノマトペの出現位置や音の変化について考察を行った。対象としたコーパスにおいて、553種のオノマトペが1,715件の駄洒落に合計1,737回出現した。それらを分析したところ、2~3文字の短いオノマトペの出現頻度が高いこと、大部分のオノマトペが変形表現(駄洒落の前半部分)に出現することなどが明らかになった。オノマトペは他の語群にはない独特な音韻的特徴をもつため、駄洒落を作るために種表現の音に近い言葉を探すときオノマトペが多用され、変形表現に出現すると考えられる。また、駄洒落を成立させるためにオノマトペの音を様々な形式で変化させていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は3種のコーパス(地方議会会議録、Web文書、ユーモア文)を整備し、オノマトペの抽出を行った。その上で、オノマトペの出現傾向の分析を行った。ユーモアに関するコーパスを対象としたオノマトペ分析は当初の予定には含まれていない新たな試みである。文脈情報の抽出については、1種のコーパス(地方議会会議録)について完了している。 上記の理由から、進行状況は実施計画と概ね一致していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に分析したコーパスを対象として、さらに詳細な分析を行い、オノマトペの語義と文脈情報を明らかにする。語義分類に際し、日本語オノマトペ辞典の語義を基準とするが、辞典に掲載されていない語義で使用される用例が存在する可能性が高い。その場合は、研究協力者と協議の上、新たな語義を定義する予定である。語義分類はすべて人手で行う必要があるため、大学院生と共同で作業を行う。 語義分類が完了した後、文脈情報の分析を行う。オノマトペの語義の決定には係り先が重要な役割を果たすが、係り先よりも修飾語が有用な例も確認されている。各オノマトペの用法について、大量の語義分類済みデータから統計的に判断する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、コーパス構築に関わるデータ整備のためにアルバイターを雇用する予定あった。しかし、予備的な作業を行ったところ、研究代表者が単独行うことが可能な作業量であるという結論に至った。したがって、アルバイターとデータを共有するための記憶メディア(外付けハードディスクやUSBフラッシュメモリ等)の購入に掛かる費用、アルバイターへの謝金が不要となり、次年度使用額が生じた。 平成30年度には、オノマトペの文脈情報を複数名でアノテーションする予定である。次年度使用額はその際に必要な物品の購入に使用する予定である。
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