本研究は、高校教育の高度化の動向に応じ、図書館連携による高校生への学習支援可能性を追究することを目的とした。特に、探究学習を行う高校生に対し、大学図書館等の高度な資料を有する機関の利用権も与えることで、有効な支援となり得るのではないかという仮説を検証し、新たな連携モデルを提案することを目指した。この目的に沿って細分化したリサーチクエスチョンを設定し、本研究期間内で主に以下の調査等を実施した。 (1)文献調査を通した関連分野の議論の変遷および国内外の動向の確認を行った。国内においては図書館の高大連携に言及している文献は少ないものの、海外の専門書では高等学校図書館を大学図書館での学術活動への導入と捉える言及が早期から見受けられた。 (2)アンケート調査による全国の高校生の図書館利用に関する実態解明を行った。これにより、高校生の日常の文献入手先や潜在的な情報ニーズを明らかにし、そのデータを通して大学図書館が高校生の学びの支援に資する可能性を考察した。 (3)SGH事業採択校を対象として、生徒執筆論文に記載されている参考文献リストの分析を行った。その結果、一部の高等学校では、大学図書館レベルの資料を参考文献として使用し論文執筆が行われている実態が明らかになった。 (4)高校時代に大学図書館を利用可能であった卒業生に対する回顧的インタビュー調査を行った。その結果、高校時代に大学図書館の利用権を与えることは、高校時代の探究学習における文献入手の円滑化に資するだけでなく、大学進学準備として情報リテラシーを早期育成する意義も期待できることが明らかになった。 また、最終年度においては、新型コロナウイルス禍に伴い実施保留となっていた、高校生による大学図書館利用の履歴データ分析を試みた。その他、SSH指定校における特別授業や学校教員向けの招待講演など、本研究成果をもとにした社会還元活動も継続的に実施した。
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