研究課題/領域番号 |
17K12800
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
河島 茂生 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 准教授 (00453449)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 情報倫理 / 人工知能 / ロボット / サイボーグ / 倫理 / メディア論 / システム論 |
研究実績の概要 |
本研究は,人工知能などの最新技術がもたらす倫理的空白を埋め,これからの社会制度の構築に資することを最終的な目的としている。こうした社会的意義を達成するため,本研究では,ネオ・サイバネティクスやメディア論を拠りどころとして,人工知能・ロボット・サイボーグの倫理的基礎づけを行い,また実証的知見を蓄積する。 これまでの研究から,生物/機械の区分が人工知能倫理を考えるうえでの橋頭堡となることが見えていた。そこで本年度の研究では,基礎情報学における視点移動の操作により社会的次元の倫理と個人的次元のそれとの違いを見出し,その相違点を踏まえたうえで次元間の相互関係に着目する営為がビッグデータ型人工知能時代における情報倫理には不可避であることを述べた。社会的次元の倫理は個人を拘束するゆえに人工知能によって社会の自律性が差別の生成・助長を起こさないように注意しなければならない。また,個人的次元の倫理は社会的次元の倫理の基盤であり,現在でも人間の心理は,みずからの内部で思考を自分で作り出しており,人工知能が直接操作できるものではない。この点を忘れてしまえば,人間は機械と同等の存在になってしまう。 これだけでなく,本年度の研究において「ロボット」という語がいかに新聞紙上で語られていたかを経年的に分析し,人工知能の語られ方と比較した。人工知能とロボットは,頻出語がかなり重複しており,似た文脈で語られる。記事数の総量をみると,人工知能に比べロボットの記事数が全般的に多い。また,ロボットは,人工知能と比べて明確なるブームを特定しづらく,2000年以降徐々に記事数が増えはじめ,第3次人工知能ブームと合わさって2014年以降記事件数を伸ばしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に予定していた人工知能倫理の理論研究は早目にまとまった。平成30年度に研究成果が学術書の一章として公開される予定である。またロボットの言説分析も予定通り実施しすでに研究成果を公開している。アンケート調査については,科学研究費補助金の支給前に思いがけず人工知能倫理のアンケート調査を行う機会を得られた。平成29年度の進捗は,総合的に考えると科学研究費補助金の応募の前に予定していた計画に比べて早く,おおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
理論研究や言説分析は,これまで順調にきているため従来どおり進めていく。アンケート調査は,平成30年度中に1回目を実施し,基本的な分析を完了させ,平成31年度中には研究成果の報告が可能になる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた自動運転車の倫理基準に関する意識調査を申請前に予想していなかったかたちで実施することができたため,また交付決定金額が申請額を大幅に下回ったため,平成29年度はアンケート調査を見送り,平成30年度・平成31年度に調査予算を集中させることにした。平成29年度の研究計画をすでに満たしているのに加え,安価で信頼性の劣る調査を3回実施するよりも,信頼性のある調査を2回実施したほうが社会的意義・学術的意義が高まると推察されたからである。
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