研究課題/領域番号 |
17K12804
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷口 雄太 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20747125)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学習過程 / エラー解決 / 学習行動 / 早期予測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、プログラミング学習においてはソースコードのコンパイルエラーが学習者のつまづきとなり得るのにも関わらず、それが教師視点で顕在化しにくいという問題を解決することである。本研究は学習者が解決しようとしているエラーの本質を捉え、またそれを解決しようとする学習過程を精細に把握することにより、従来見落とされがちであったつまづきを早期発見して可視化し、学習者と教師の双方を支援を通して教育全体の改善を目指す。 前年度は学習者がどのようなコンパイルエラーに遭遇しているのか、またそれらの解決に教材がどのように役立つか、といった点を中心に分析を行った。個々のエラーを中心とした分析により、エラーと学習者・教材との関係性を明らかにするものであり、点レベルの分析と言える。本年度はこれを線レベルの分析へと押し進めた。個々の学習者に焦点を移し、特に学習過程における一連の学習行動について分析した。 まず、コンパイルエラーの発生後それを学習者が解決(成功)する、または解決することを放棄(失敗)するまでの連続する行動列「エラー解決過程」が学習者によってどのように違うかを講義で扱われる複数のトピックを対象に調査した。学習者に依存するものの、ほとんどのトピックにおいて、成功に終わるエラー解決過程の方が失敗に終わるものより多いことが分かった。エラー解決過程に掛かる時間については、解決できた場合とそうでない場合に同程度の時間を割いている学習者は比較的少なく、どちらか一方により多くの時間が割かれている(学習者が二極化している)ことが明らかとなった。また、つまづきの早期発見を目的に、エラー解決過程が成功するか失敗するかを最初の数分の行動から予測する試みも行った。現状ではAUCが0.57前後と十分な性能が出ているとは言い難いが、一定の予測が可能であることが示されたといえ、今後改善していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では授業後の学生からのフィードバックを用いることで、学習におけるつまづきを発見することを想定していたが、それでは無意識のレベルでのつまづきを検出することはできない。また、前年度の研究から、学習中の教科書の利用方法がエラーの解決に影響することが示唆されたため、本年度は教科書の利用を中心とした学習行動に焦点を当てて分析を行った。これにより学習者が無意識のうちに選択している学習行動から学習のつまづきの検出を行うことができると考えられる。本年度は学習者がエラー解決にかける時間やトピックごとの得意・不得意について分析することで、それぞれのとる学習行動のパターンをある程度明らかにしたと言える。また、最終的なつまづきの顕在化に向け、機械学習を活用した早期検出の予備実験が完了している。これらの結果については国際会議における発表が決まっている。以上の進捗から研究を十分に進展させたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度においてはエラーの早期検出手法の洗練、および実際の授業における評価を予定している。共同研究を実施する企業のシステムを活用し、多様な学習活動の取得を実現することを予定しているほか、システム上に学習状態をフィードバックする仕組みを開発することで、実際の授業における早期介入の効果や学習者の行動の変容について分析・評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入とデータ作成を行わなかったため、物品費と人件費が余った。次年度の物品購入やデータ作成などに充てる他、研究発表にかかる費用として利用する予定である。
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