研究課題/領域番号 |
17K12805
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
宮崎 誠 畿央大学, 教育学部, 特任助教 (60613065)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ルーブリック / データベース / コンピテンシー / CASE / LTI / 技術標準化 / リポジトリ / プラグイン |
研究実績の概要 |
平成30年度は,開発フェーズと位置づけている.ラピッドプロトタイピングによるCASEに準拠したシステム開発に着手し,ルーブリックやコンピテンシーをファイルとしてインポート,エクスポートする等の機能要件のうち7割程度を実現した.IMS GLCが平成29年度に公開した標準規格 IMS Competencies and Academic Standards Exchange (CASE) Service Version 1.0は,学習や教育に関するコンピテンシーや学術基準,ルーブリック等の電子的なやり取りを実現するために策定された技術仕様である.調査時は,CASEに関する資料はIMS GLCで公開された技術文書以外にほとんどなく,2018年度 教育システム情報学会 全国大会(第43回)および日本IMS協会らが主催したIMS LTI & Caliper ハッカソン 2018にてコンピテンシーや学術基準のシステム開発における標準化動向を調査し,発表した. リポジトリは,OSSのeポートフォリオシステムMaharaからプラグイン経由での利用を目指している.本研究で得られたMaharaプラグイン開発のノウハウをMaharaオープンフォーラム2019にてワークショップを行い,参加者と共有した. 今後,リポジトリとしてルーブリックの登録に進めるため,現在,ルーブリックを活用した授業実践研究グループにルーブリック登録の協力を依頼し,約10件の承諾を得られている.研究グループの活動については,畿央大学紀要第30号にて報告した.なお, AAC&UのVALUEルーブリックについては,日本語版が公開されため,リポジトリへの登録を検討している.また,本システムの利用ログは,IMS Caliperへの対応しLearning Analyticsで用いることができる可能性について調査を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラピッドプロトタイピングによるシステム開発に着手した. 平成29年度にIMS GLCが公開した標準規格 CASEを調査し,本研究課題ではCASEに準拠することがルーブリックの利用,普及では必要だと考えた.CASEに関する技術文書や情報は,まだ少なかったため,本研究にて調査した結果を教育システム情報学会全国大会や日本IMS協会の企画等で発表した.CASEを採用することで,ルーブリックやコンピテンシーのスキーマ定義が実現できることができることが分かった.よって,プロトタイプステムの基盤には,Public Consulting Group(PCG)らによって開発されているPHPとMySQLによるオープンソースのコンピテンシー管理ツールOpenSALT(GitHubにてMITライセンスで公開)を利用した.OSSのOpenSALTを利用することで,システム開発工数を抑えることができた結果,前年度やや遅れていた工数を取り戻すことができた.OpenSALTを基盤としたプロトタイプは,主にバックエンドとしての機能を実現したものであるため,機能実装の進捗率は,機能要件の70%程度である.残りの30%は,各種教育情報システムとの連携,統合のためにLearning Tools Interoperability (LTI)への準拠とフロントエンドとしてWebデザイン面の開発であり,引き続き進めていくが,すでにPHPのLTI実装については,法政大学 情報メディア教育研究センター,日本IMS協会,IMS GLCが主催したIMS LTI & Caliper ハッカソン 2018にてハッカソンの講師を担当し,PHPのIMS LTI & Caliperサンプルプログラムを提供した実績があるため,コードの移植が主な作業となること,またWebデザインについても見通しがたっているため,軽微な遅れである.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,本研究課題の最終年度となる.システム開発を完了し,検証と成果の公開のフェーズとして予定している.検証の観点は,共有サイトのLMS等からの呼び出しにLTI準拠することによってルーブリックのインターオペラビリティ(相互運用性)を確立できたか,さらに, MaharaプラグインとMoodleにリポジトリからのルーブリックインポート機能を実装することによって,ポータビリティ(可搬性)を確立できたか,である.ルーブリック共有サイトの完成後は,リポジトリとしての役割を担うためにルーブリックの登録を進めていく.そのために,授業実践などでルーブリックを作成し,利用している研究者に協力を依頼することが必要であり,学会や研究会を通じて,広く協力を呼びかける.また,ルーブリックの国際化のワークフローを確立することが海外のルーブリックを日本で活用するためには非常に重要なため,クラウド型の翻訳ツールであるTransifexとの連携を実現させる.なおMaharaやMoodleのプラグイン開発については,同様のシステム開発研究を実施している他の研究者とも連携しつつ,進めていく.また,引き続き,本研究課題の進捗に伴う研究成果については,学会等での発表を通じて順次公表していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
予算計画の業務委託分についてオープンソースのシステム(OpenSALT)を基盤として開発をスタートできたため,予算と工数の圧縮が可能となった.予算を圧縮した分は,教育学習支援システムにおける技術標準規格への対応また今後必要となるルーブリックのリポジトリへの登録協力体制の構築に必要なワークショップや勉強会の開催に必要な旅費や物品購入に利用した.
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