研究課題/領域番号 |
17K12806
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
楠田 佳緒 東京女子医科大学, 医学部, 特任助教 (00780131)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 器械出し看護師 / 手術器械 / RFID / 医療安全 / 看護教育 |
研究実績の概要 |
手術現場において,看護師が医師へ手術器械を効率的に受け渡しできることは,手術時間の削減や医療安全の向上に寄与する.本研究では看護師の手術器械操作の教育に着目し,その操作方法の定量評価および,その評価軸を基盤とした学習支援システムを提案する.具体的には,RFIDタグ付き手術器械を用いて,手術中の看護業務を定量的かつ自動的に計測・評価する手法を提案する. 本年度の目的として,(1)器械出し技能の評価モデルの構築,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行うこととした.成果として,(1) 手術室内でRFIDタグ付き手術器械の情報取得システムを用いて実施した臨床評価試験の計22例分の解析を行った.さらに,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を実施するため,手術器械の使用状況(手術での使用の有無)について検知可能なソフトウェアを開発し,セット組み中でも手術器械の使用率の記録を実施した.これまでの研究成果は,学会(国内3件)にて発表を行い,投稿論文としてまとめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目的として,(1)器械出し技能の評価モデルの構築,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行うこととした. (1)器械出し技能の評価モデルの構築では,手術室内でRFIDタグ付き手術器械の情報取得システムを用いて実施した臨床評価試験について,総計22例分の解析を行った.また,器械出し技能のモデル構築のため,ソケイヘルニア術式においては手術の工程を「切開」「術野へのアプローチ」「メッシュ設置」「縫合」へ分類する作業を行った.熟練看護師の器械出しモデルのパラメータとして,まずは各行程中の手術器械の種類や本数を特徴量へ設定することとした. (2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価では,臨床現場におけるRFIDタグ付き手術器械システムを検証するため,手術器械の使用状況(手術での使用の有無)について検知可能なソフトウェアを開発し,セット組み中でも手術器械の使用率の記録を実施した.結果として,合計76症例分の手術器械の使用/未使用のデータを取得でき,準備した手術器械のうち35%が使用されていないという結果を得た. これまでの成果は,学会(国内3件)にて発表し,手術医学会誌へ投稿予定である.また,データの分析手法についてドイツのスマート治療室を開発する研究チームとディスカッションを行い,データ連携に向けた情報交換を行った.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,乳腺外科手術やソケイヘルニア手術の器械出し映像データが蓄積されつつあり,熟練看護師と未熟練看護師の器械出しに特有のパターンが存在することがわかった.モデル開発において,手術器械の種類(パラメータ)が少なくなることは,モデル精度の向上が期待できるため,最適な手術器械本数についても検討を進める.臨床評価試験から得られた映像情報から,手作業にて工程を分類し,学習用データセットとするための作業を実施する.さらに,本システムに必要な情報取得用アンテナの開発も並行して進める. さらに,本年度に引き続き器械出し技能の評価モデルを構築するとともに,新人看護師および熟練看護師の器械出し作業を取得する.具体的には,手術中のRFIDタグ付き手術器械の情報から,使用手術器械の特徴量抽出手法について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,当初計画において,新人看護師・ベテラン看護師の作業モデルを作成し,新人看護師に対する教育システムの開発を予定していた.当該システムでは,新人教育における動作状況を取得するためのハードウェア(アンテナシステム)の基盤化を進めていたものの,設計段階で電磁誘導の結合を防止する等の対策が十分ではなく,当初の予定より実装が遅れている.したがって,次年度へ延長して実施する.次年度に繰り越す課題として,整合回路基板の開発,および,評価のための実験実施とした.
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