医療安全向上のためには,患者安全性を高めるとともに,医療従事者の支援を行うことが求められる.手術現場において,看護師が医師へ手術器械を効率的に受け渡しできることは,手術時間の削減や医療安全の向上に寄与する.本研究では看護師の手術器械操作の教育に着目し,その操作方法の定量評価および,その評価軸を基盤とした学習支援システムを提案する.具体的には,RFIDタグ付き手術器械を用いて,手術中の看護業務を定量的かつ自動的に計測・評価が可能となり,医療安全と教育の質の双方の向上を図る. 本年度の目的として,(1)器械出し技能の評価モデルの構築,および,(2)手術器械や医療材料の安全性に関する有効性評価を行うこととした.成果として,(1) 手術室内でRFIDタグ付き手術器械の情報取得システムを用いて実施した臨床評価試験の総計31例分の解析を行った.器械出し技能のモデル構築のため,ソケイヘルニア術式においては手術の工程を「切開」「術野へのアプローチ」「メッシュ設置」「縫合」のフレームへ分類する作業を行った.本データにより,学習支援システムの教師データとなる工程情報を得ることができた.(2)手術器械や医療材料の安全性に関する有効性評価を実施するため,手術器械の使用状況(手術での使用の有無)について検知可能なシステムを開発した.感染症発生時のトレーサビリティシステムを実現し,通常業務中に蓄積されたデータから対象の手術器械を迅速に特定でき,医療安全に寄与できることがわかった.さらに,医療材料(特にガーゼ等)の業務負担軽減と医療安全を目的としたシステムについて,カウントシステムに対する精度評価を実施した.これまでの研究成果は,投稿論文(海外1件)にてまとめ,他1件を執筆中である.
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