研究課題/領域番号 |
17K12808
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大村 英史 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 助教 (90645277)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 音高空間 / 音価空間 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,旋法と律動の定量的統一モデルをつくり,それを用いた旋律および楽曲生成システムを開発することである.音楽情報処理の研究は近年盛んであり,計算機を用いて音楽を生成する試みも多く行われている.しかしながら,依然として音楽の分野で経験的に作られた従来の音楽理論を基にしたモデルやシステムが一般的であり,計算機上で音楽を扱いつつも完全な定量的なモデル設計ができていない.本研究では,音楽で用いられる音の物理的特徴量である音の高さと音の長さの関係性を用いた音楽の理論構築を行う.そして,従来の音楽理論との比較検討を行い,提案モデルによる音楽生成システムの開発を試みる. 平成29年度は,第一のフェーズ「音の物理的特徴量によるモデルの構築」を実施した.これまでの研究では,音楽の旋法のモデル化のために,音高の関係性の理論「五度圏」をもちいてきた.一方,音楽の律動のモデル化のために,音の長さの関係性「音価」をもちいてきた.「五度圏」も「音価」どちらも比によって音と音の関係を表記しているが,旋法と律動の特徴量を正確に表現できるものではない.このフェーズでは,これらの問題を解決すべくモデルを提案した.具体的な手法としては,五度圏や音価といった音楽理論に依存せずに,音の物理的特徴量に着目した.これにより,音高においても音価においても同様な空間を作成した.そして,この格子空間内での各音(音高と音価)の発生確率を検討することで「音の物理的特徴量によるモデルの構築」を実現した. .
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
五度圏や音価といった音楽理論に依存せずに,音の物理的特徴量に着目した.これにより,音高においても音価においても同様な格子空間を作成することができた.この格子空間内での各音(音高と音価)の発生確率を検討することで,本年度の目的であった「音の物理的特徴量によるモデルの構築」を実施することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,第二のフェーズ「提案モデルを用いた音楽生成システムの構築」を行う.平成29年度に構築した音の物理的特徴量によるモデルを計算機に実装をする.今回想定している音の物理的空間では,いくつかの正規分布を用いることで旋法的な表現力が増すことが期待できる.つまり,混合正規分布をもちいて実装を行う.これにより,移調の限られた旋法のような人工的な旋法も定量的な表現が期待できる.さらに,正規分布だけでなくほかの分布の利用可能性についても検討を行う.実装が終了したら,音楽理論との整合性を職業音楽家のアドバイスを基に検討を行う.また,実際の聴感上の確認のために実験参加者を募った実験を実施する.実装したシステムの出力を実験参加者に音楽として聴取してもらい,モデルの音楽生成の可能性について検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が進んだため次年度予定していた成果発表を前倒しで行った.そのため,国際会議発表費用を前倒しで申請を行ったが,出張費に関して所属機関の補助を受けることができたため繰り越し金額が生じた.次年度使用額は,今後の成果発表費用に用いる予定である.
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